かつて、これほどストレスやプレッシャー、恐怖感のないドゥカティのリッタースーパースポーツがあったでしょうか。そのハンドリングは、まさに異次元。まずはデビューフェア期間中に、試乗をオススメします。
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6月21(土)〜7月31(木)の期間でパニガーレV2Sのデビューフェアを開催
もしドゥカティ以外のメーカーが軽量化追求となったら、カーボンやチタンといった高級素材を使う発想になるのかもしれません(莫大なコストはかかるかもしれませんが……)。しかしドゥカティは軽いバイクを作るために、まずはエンジンを開発。根本的なアプローチがまるで異なるのが、ドゥカティの面白さや魅力と言っていいでしょう。
新しく「V2」と名付けられたエンジンは、以前のパニガーレV2に搭載されていたエンジンより9kgも軽く仕上がっています。そしてそのエンジンを搭載するパニガーレV2Sは、前モデルから17kgも軽量です。
パニガーレV2という車名は変わっていませんが、2025年モデルはまるで異なるバイクと言っていいでしょう。もちろん、走り出してもNEWパニガーレV2は別物でした。それはスポーツバイクの新境地を切り開く存在と言っても大袈裟ではなかったのです。
そんな話題のNEWパニガーレV2がいよいよ上陸。6月21(土)〜7月31(木)の期間でデビューフェアが開催されます。期間中に、試乗&見積りされた方に、先着でドゥカティ・オリジナル・マイクロファイバータオルがプレゼントされます。
今回は、スペインのセビリアサーキットで開催されたパニガーレV2の国際試乗会のレポートをお届けしましょう。
パニガーレV2は今回試乗した足まわりに豪華装備を持つ写真のS(240万8000円)とスタンダード(211万9000円)の2機種をラインナップします。
今回はスペインのセビリアサーキットで試乗。保安部品を外し、タイヤはスリックに交換されていました。
新たに登場したV2エンジン。バルブ開閉機構であるデスモドローミックを廃し、軽さと扱いやすさを追求。新たに採用されたスプリングによるバルブ開閉機構には、DLCコーティングされたフィンガーフォロワーロッカーアームとIVT(インテーク・バリアブル・バルブタイミング)、さらにドゥカティ初の中空チタンバルブなどを採用しています。部品点数を減らし、徹底したコンパクト化が進められたのです。
最軽量パニガーレが生み出すスポーツライディングの新たなる境地
筆者(小川勤)がこの新しいパニガーレV2の虜になるのに時間はかかりませんでした。セビリアサーキットは僕にとって初めてのコースで、緊張感を持ってスタートしましたが、俊敏なハンドリングは乗りやすさに直結しているのがすぐにわかったからです。
その後は積極的にコーナーにチャレンジしたい気持ちにさせてくれて、実際に挑んでみても簡単にクリアさせてくれたのです。かつてのドゥカティは、どちらかというと難しさや鋭さを工夫して攻略するのが常識でした。だから、まさか1本目の走行からこのような親しみやすい感覚が味わえることは、軽いカルチャーショックとして僕を驚かせてくれたのです。信じられないかもしれませんが、そのハンドリングの質は250ccや400ccのような軽やかなフィーリングです。
ただ、そう感じたのは、どうやら僕だけではなかったようです。1本目を終えたピットでは、世界中から集まったジャーナリストたちが僕と同じように歓喜していたのです。この日は15分×6本の走行枠があり、すでに皆が次の走行に期待しているのがわかります。
セビリアサーキットはアップダウンやブラインドコーナーの続く、テクニカルコース。ただ、パニガーレV2Sのキャラクターがあれば、楽しみながら攻略ができるのです。
コースの最終セクションは左右に連続で6回切り返すテクニカルセクションも。250ccのような軽さが生きるシチュエーションです。
ウイングレットのないすっきりとしたシルエットもパニガーレV2Sの特徴です。
重量以上に軽く感じさせるのもドゥカティの秀逸さ!
ドゥカティは、昔からライディング時の軽快さを出すのが上手なメーカーです。並列2気筒でなくV型2気筒を選ぶのもそのためです。コストはかかりますがエンジンの幅を狭くできるからです。ドゥカティのエンジンは単気筒と変わらない細さと言ってもよく、さらにフレームもほとんど存在感がありません。
フレームはエンジンの上にマウントされ、エンジンと車体を繋ぐパーツ、もしくはエアボックスにしか見えないでしょう。細いエンジンにさらに細いフレームをマウントするのがドゥカティの車体設計思想なのです。
片手で簡単に持てるフレームは約4kg。エアボックスはこの中に収まり、とても合理的な設計になっています。
エンジンをフレームの一部と考え、エンジンからフレーム、スイングアーム、リヤサスが生える車体構成。パニガーレV4の流れを汲む設計思想です。
またスイングアームやリヤサスペンションもエンジンから生えるような形でマウント。昔から全てを合理的に捉え、設計するのがドゥカティで、近年はその開発姿勢がどんどん大胆になっています。
また、軽量化はサスペンションをソフトにできるメリットもあります。実際、パニガーレV2は前モデルから17kgも軽量化されています。例えば200km/hから減速する際や、高速コーナーの切り返し時に17kgの重量物がなければサスペンションの負荷が軽くなることは簡単に想像できるでしょう。よく動くサスペンションは、曲がるタイミングを見逃しにくい特性にも繋がります。
これが重量以上にハンドリングを軽く感じさせる、ドゥカティの上手さなのです。
両持ちになったスイングアーム。とてもしなやかでグリップの掴みやすさが魅力です。
スイングアームの外側をエキパイが通るデザイン。
サイレンサーは2本出し。かつてのパニガーレV2よりも音質は少しマイルドになっているような気がしました。
攻めてもライダーを疲れさせない不思議な感性
3本目、4本目、5本目と走行を重ねていくと不思議なことに気がつきます。身体がまったく疲れていないのです。この日は、暑くも寒くもない抜群のスポーツ走行日和。ほとんど汗もかいていません。これも軽さがもたらすメリットでしょう。
ストレートエンドでは235km/hくらいからブレーキング。軽い車体はブレーキングでの質量も低め。これがパニガーレV4だと両肩が抜けるんじゃないだろうか、という大きな負荷になります。加速時もこれでもかと上半身を駆使するのですが、パニガーレV2Sは体力や筋力への負担が少なくてすみます。
フルバンクした状態からでも瞬時に起き上がり、次のコーナーに向けたアクションを取ることができます。ポジションがアップライトになっていることも疲れない要因かもしれません。
ドゥカティは技術説明の際に、「NEWパニガーレV2Sは、前のモデルから65ccの排気量と35psのパワーを失っているにも関わらず、サーキットでは同じようなラップタイムを刻める」と言っていましたが、乗り込んでいくとそれも納得。旋回中の自由度の高さやわかりやすいグリップ感を知ると、安定して良いリズムを刻めるような気がしてくるほどです。
エンジンは確かに前モデルのパニガーレV2の方がパワフルでした。しかし、NEWパニガーレV2Sの方がはるかにスロットルを開けやすいのも特徴です。
ブレーキキャリパーはコントローラブルな操作性を約束するブレンボM50、フロントフォークは伸び側と圧縮側の減衰力調整が左右で独立したオーリンズ製倒立タイプ。
フルアジャスタブルタイプのオーリンズ製モノショックを車体の左サイドにマウント。エンジンとスイングアームを結んでいるのがわかります。
高性能な足まわりが走りを力強くサポートしてくれるのがよくわかります。
充実の電子制御を駆使してドゥカティでスポーツライディングする喜びを!
ライディングモードはウエット、ロード、スポーツ、レースが用意され、トラクションコントロールやウィリーコントロール、アップ&ダウンに対応するシフターも装備されています。
今回は最初からスリックタイヤでの試乗だったため、モードはスポーツとレースしか試さなかったですが、レースモードでもトラクションコントロールの介入はなく、NEWパニガーレV2Sの優れた車体とサスペンションがきちんとタイヤをグリップさせていることを実感することができました。
クイックシフトの作動感もよく、しっかりとペダルを送り込めばバンク中も躊躇なく使用できるます。
途中、ペースを落としてエンジンの中速域を繋いで走ってみましたが、3000〜6000rpmのトルク感が良く、高いギヤ&低い回転での走りも余裕でこなしてくれます。技術説明時に「最大トルクの70%を3000rpm発生し、3500〜11,000rpmまでの間に最大トルクの80%の下回ることはない」とのフレーズがあったのですが、それを実感できました。新しいV2エンジンは、サーキットに特化しているわけではないのがよくわかります。
「今日は楽しかったね」。走行を終えた誰もがこのようにコメントをして、ピットにいるみんなとこの気持ちを共有しました。やっぱり軽いバイクは無条件で楽しいのです。こんなに清々しい気持ちでスポーツ走行ができたのはいつ以来だろうと思います。ちなみに翌日の筋肉痛も皆無でした。
「新しい章の始まり」。V2エンジン発表時にそんな意気込みを聞いたのですが、それは想像以上に大きなインパクトをもたらしてくれました。この新たなるスポーツバイクの誕生を心から歓迎したいし、この新たなるスポーツライディングの世界を多くの方と共有したいと思います。
視認性の高い5インチTFTメーター。
メーターの表示画面はロード、ロードプロ、トラックから選ぶことができます。
モードにより各制御の介入度合いがご覧のように変化します。
身長165cm、体重68kgの筆者(小川勤)がパニガーレV2Sに跨った際のポジション。ハンドルは前モデルより60mm高く、上半身や腕には比較的余裕があります。
身長165cm、体重68kgの筆者(小川勤)がシート高837mmのパニガーレV2Sに跨った際の足着き。シートは高めですが、車体が軽いので安心感があります。
軽さとスリムさを追求し、美しいラインを繋いだデザイン。実際に見るととてもコンパクト。是非ともデビューフェアで体感してみてください。