
”ミドルクラスがキテマス!”
これ、間違いないです。多くのメーカーが、幅広いセグメントでミドルクラスのモデルラインアップを強化しているのです。その中でも今回取り上げるスズキ・GSX-8Rは要注目モデルです!
800cc(正確には776cc)の並列2気筒エンジンは、パワフルかつ扱いやすく、しかも軽量コンパクト。
フルカウルで纏められたスタイリングはシャープでクール。
装備やスペックからしてお値段も手ごろ。
これらの要因もあり世界的に大ヒット!
欧州ではGSX-8R Cupというワンメイクレースも開催され、レース仕様モデルも販売されるほどヒートアップしているのです。
そんなGSX-8Rを1週間に渡り試乗テストを行いました!
目次
中間排気量の2気筒 これがトレンドなのですよ!!

まずはっきり言って、私は”オジサン”です。
いつまでも若くいられると思ってここまで来てしまいましたが、すっかりアラフィフです。
こんな私は『フルカウルスポーツバイクは4気筒だ!』とイメージすることがあるのですが、これは旧世紀に植え付けられたイメージの名残であることのほかありません。
特に排気量600~900ccの中間排気量モデル、いわゆるミドルクラスの車両を見渡してみると、今回取り上げるスズキGSX-8Rだけでなく、ヤマハ・YZF-R7、カワサキ・ニンジャ650、アプリリア・RS660など、多くのメーカーが2気筒エンジンのフルカウルスポーツバイクをマーケットに投入してきているのです!
超高回転を追い求めた昭和にはじまり、教習所で免許をとれるようになったことで大排気量モデルが身近となり、そして令和ではトータルバランスと気持ちよさに落ち着き、『ミドルクラス+2気筒エンジン』がトレンドとなっている……。ざっくり言えば、そうした流れでここまできました。
実際のところ、オーバーリッターモデルは過剰に感じることも多いのです。
街中を走れば持て余してしまうパフォーマンスですし、サーキットに持ち込んでもすべてを引き出すには相応のスキルが必要。
となると、2気筒ミドルクラスの需要が伸びるのは必然的であることが分かります。
そのような中でも今回GSX-8Rにスポットを当てたのは、”私の行動範囲の中で、よく見かけるから=売れているモデル”であり、つまり良いバイクであることに違いないわけです!
レースモデルという呪縛を解き GSX-R系の雰囲気に変化?


GSX-Rというネーミングを聞くと、どうしてもレーサーレプリカが頭に思い浮かんでしまうのですが、現在スズキはファクトリー体制でレースに参戦しておらず、トップカテゴリーであるWSBK(スーパーバイク世界選手権)で戦っていたGSX-R1000も生産を終了しています。
つまりGSX-8Rはレーサーレプリカ的なモデルではないのです。
ですからスタイリングを見てみると、スポーティでありながらもタンデムライドがしやすそうなシートや、ほどほどに抑えられたカウル類など、実用的な雰囲気も伝わってきます。
実はこの潮流はGSX250Rにも同じことが言え、レーサーレプリカではなく、あくまでもスポーティなフルカウルスポーツバイクというパッケージングとなっているのです。
その証拠に、車両に跨ってみると、想像以上に足つきの良いことやハンドルセット位置も高めであることが分かり、毎日乗るような使い方がしっかり考えられていると感じました。
それでは実際に走らせた印象をお伝えしていきましょう。
もりもりトルクが楽ちん!! フルバンクも不安なし!!




GSX-8Rで走り出して、まず感じたことは、低回転域の扱いやすさで、しっかりしたトルクがあり、しかもそれが過度ではないために、ストップ&ゴーを繰り返すような市街地であったり、狭い道が続く路地などでもとても乗りやすいことが分かります。
そのうえスポーティなセパレートハンドルでありながら高い位置にセットされており上体が起き、ステップバーも低めに抑えられているため、ライディングポジションの自由度が高く、全体的にストレスフリーなライディングを楽しめるのです。
若干気になった点を挙げると、アップ/ダウンどちらも作動するクイックシフターが標準装備となっており、これが低回転で使用すると多少変速ショックが感じられました。
ただ、これは他のスポーツバイクでのクイックシフターでも結構見られることであり、低回転時はレバー操作を併用するのも良いですし、乗り続けているうちに、ほとんどの回転数でスムーズなシフトチェンジができることがわかりました。
エンジンに関して少し付け加えておくと、GSX-8Rに搭載されている並列2気筒エンジンは、次世代のミドルクラスプラットフォームの開発に着手したスズキが、『扱いやすく、トルクフルで、乗って楽しいフィーリング』、『コンパクトで軽量なユニット設計』、『電子制御との相性も良い現代的なプラットフォーム』を元に作り上げたもので、2023年に登場したGSX-8SとVストローム800DEに初採用。それを追う形で、2024年にGSX-8Rが発売されました。
ポイントとなるのは270度クランクを採用していることで、不等間隔爆発とすることでVツインエンジンのような鼓動感とトラクションを得られます。
そのうえで2軸のバランサーシャフトを使用することで、振動を抑えつつ高回転の滑らかさも実現しています。
さらに電子スロットルとしたことで、ライディングモードやトラクションコントロール、先述したアップ/ダウンクイックシフターなども装備することができているのです。
乗りやすさだけでは物足りない? 運動性能的にはどうなのよ!?




GSX-8Rが乗りやすく扱いやすいというのはとても大きなメリットでありますし、もし試乗する機会があるのならば、少し走らせるだけでも多くのライダーが体感できると思います。
でもGSX-8Rは、フルカウルスポーツバイクでしょ? 運動性能の高さやパフォーマンスはどうなのよ、といやらしい考えが頭によぎってしまうのは当然のこと。
高速道路やワインディング、クローズドコースも走ったところ、これがGSX-8Rはめちゃくちゃ”走る”のです。
”走る”とそう表現した背景には、やはりGSX-8Rを説明するのに外すことができない扱いやすさという要素があるのです。
例えば、旋回モーションに入る際のブレーキングから、上体なり下半身なりイン側アウト側のステップへの入力、コーナーを抜けるときの加速まで、つまりコーナーリングに関する一連の作業が、どれも自然な感覚で行えます。
高回転まで引っ張るような回し方はもちろん、個人的なスイートスポットは5000~7000回転くらいの間で、特に高速やワインディングなどの公道でもエキサイティングな走りを楽しめます。
シャシーの剛性感、足回りのセッティング、エンジンの特性などが高次元でバランスされていること、それだけにとどまらず、ハンドル、シート、ステップの位置関係、サスペンションやブレーキのグレードなど総じて相性良くまとめられている。その結果、気持ちよいスポーツライディングを得られることに直結しているのです。
独断と偏見で伝えたい ”勝手にGood&Bad!!” テストライダー小松男が独断と偏見で決めるグッド&バッド。


GSX-8Rのグッドポイントは多岐にわたるのですが、その中でもエンジンは良いですね。GSX-8S、Vストローム800/DEと、現行の同型エンジン搭載モデルの試乗テストを行ったことがありますが、しっかりしたパワーとトルクを備えながら、それを誰でも楽しめる特性となっていること。
扱いやすいだけでなく刺激的な要素も持ち合わせていることで、所有感を満たし、さらに長く付き合うことができると思います。
バッドポイントをあえて選ぶのならばシート形状でしょうか。足つき性もデザインも良いのですが、お尻の後方がタンデムシートに乗ることに、最初のうちは違和感がありました。スポーティなスタイリングはスポイルしてしまいますが、ワンピースシートでも良いのかもしれません。
ライダーのスキルアップをサポート! フルカウルスポーツの新基準!!

10数年前のことになりますが、世界スーパースポーツ選手権のホモロゲーションモデル、つまり600ccクラスのレーサーレプリカは、意外と乗りこなすことが難しかったことをおぼえています。
レースという土壌において高回転域でのピークパワーを上手く使い、速く走らせねばならなく、特にストリートではトルクのあるリッターレプリカと比べて扱いにくい印象がありました。
それがイマドキのミドルクラスフルカウルスポーツではツインエンジンが全盛となったこと、排気量が全体的に引き上げられたことによって、低回転域でのトルクが増し扱いやすくなったのです。
世の中的に求められているものが、”強烈な刺激”ではなく”安定や安心感”へとシフトしたこと。それが乗りやすさとして表現されるようになり、しかもその結果、『乗りやすい=速く走ることができる』という方程式が生み出されました。
そもそもレースシーンの歴史をさかのぼると、ピーキーで扱いにくくともそれを乗りこなすことができるライダーがチャンピオンになるということから、ライダーの意のままに操ることができることがもっとも重要視されるようになってきたということがあり、それがストリートモデルにもしっかりとフィードバックされていることがGSX-8Rに乗るととても伝わってくるのです。
しかも窮屈でないライディングポジションや、フラットなエンジン特性などから、ロングツーリングも余裕でこなすことができますし、試乗テスト時の燃費は満タン法で約24km/Lと上々。
はっきり言って非の打ち所がないモデルなのです。
ライバルモデル筆頭として挙げられることが多い、ヤマハ・YZF-R7とは悩むところでしょう。ただ、YZF-R7はアナログ的な部分も多く、それを魅力と感じるライダーが存在することもあります。兄弟モデルでありロードスターバージョンのGSX-8Sも悩むところかもしれませんが、フルカウルとネイキッドなのでスタイリング的に好みは分かれると思います。
ミドルクラスフルカウルスポーツとして、GSX-8Rはとても魅力的なモデルであり、乗ればその良さはしっかりとわかります!
GSX-8Rの基本スペックをチェック!
GSX-8R[2025]主要諸元
・全長×全幅×全高:2,115×770×1,135mm
・ホイールベース:1,465mm
・シート高:810mm
・車重:205kg
・エンジン:水冷4ストローク直列2気筒DOHC 775cc
・最高出力:80PS(59kW)/8,500rpm
・最大トルク:76Nm/6,800rpm
・燃料タンク容量:14L
・変速機:常時噛合式6段リターン
・ブレーキ:F=ダブルディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70ZR17、R=180/55ZR17
・価格:119万9000円
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