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1950年代の英国クラシックスタイルを現代に蘇らせる
日本で急成長を見せるロイヤルエンフィールド。筆者(小川勤)が数年前からその動向を見てきて感じるのは、ロイヤルエンフィールドのブレない姿勢です。
ロイヤルエンフィールドは、「ピュアライド」「ピュアモーターサイクリング」「ピュアスポーツ」というスローガンを掲げてバイクを開発し、ブランディングも進めています。世界各国で使われているこのキーワードは、走り出すとすぐに「楽しい!」を実感できます。そしてまさにこのピュアな気持ちがもたらすエモーションこそが、僕が世代やキャリアを問わず、多くの方にロイヤルエンフィールドを知って欲しいと思う根源になっています。
また発表会でよく聞くフレーズに「アクセッシブル」という単語があります。これは近づきやすい、乗りやすいという意味があり、これもロイヤルエンフィールドを身近な存在に感じさせてくれるポイント。初めてのバイクに選ぶ方や女性ユーザーが多いのも納得です。
クラシック350は、個人的にロイヤルエンフィールドらしさを最も色濃く反映しているバイクだと思います。ロイヤルエンフィールドは現在インドのメーカーですが、元々はイギリスのメーカー。ただ、現在も研究&開発はインドとイギリスで行われており、古き良き英国文化を現代まで途切れさせることなく繋いでいる数少ないメーカーなのです。
クラシック350は、英国バイクの全盛期である1950年代のスタイルをオマージュ。他のメーカーにもクラシックスタイルのバイクはたくさんありますが、僕が最もクラシックの香りが強いと思うのがこのクラシック350です。また、「かっこいい」と「可愛い」、さらに「美しい」を共存させる数少ない存在だとも思います。

佇まいの良さがクラシック350の魅力。日本の現代的な風景にもよく馴染みます。

単気筒ならではのスリムな車体。本物のクラシックバイクのような雰囲気を醸します。

ナロータイヤがクラシカルなテイストを強調。見るほどによく作り込まれているのがわかります。

カラーによってイメージが変わるクラシック350。記事後半で全色紹介しているので、ご自身のライフスタイルと重ねてみてください。
空冷単気筒エンジンをダブルクレードルフレームに搭載
クラシック350は、ロイヤルエンフィールドのJプラットホームを使ったバイクです。空冷の349cc単気筒エンジンをダブルクレードルフレームに搭載するこのプラットフォームは、他にもクルーザーのメテオ350 、ネイキッドスポーツのハンター350、90年以上車名が続くブリット350がありますが、クラシック350はその車名の通り、最もクラシックテイストの強いモデルです。
そのクラシック350が2025年にマイナーチェンジ。ユーロ5+規制に対応し、ヘッドライトをLED化、そしてカラー変更などが行われました。ラインナップは、試乗したクロームシリーズの他、ヘリテージ、ヘリテージプレミアム、シグナルズ、ダークの5シリーズ、計7色となります。
空冷単気筒エンジンは、今どき珍しい深いフィンが魅力。クランクケースカバーはアルミの地肌。メッキパーツ率の高さも近年のバイクには見られないクラシック感を高めるディテールです。

走り出した瞬間にフィットする馴染みやすさも魅力。インドでは小排気量からの乗り換えも多く、彼らが違和感なく走り出せる作り込みも意識しているのです。
車体は昔の英国クラシックと比較するとかなり大柄で頑丈に作られているような感じがします。ただ、クッション性の高いシートに腰を下ろし、ハンドルに手を伸ばすと、なんとも懐かしい雰囲気に包まれるのです。メーターカバーやタンクキャップ、目に飛び込んでくる景色も良い感じです。
エンジンを始動させると、「タッタッタッタッ」と、単気筒特有のリズムが身体に響きます。スロットを開けるとマイルドにエンジンが吹けます。「ドルルーン、ドゥルルーン」この時点で豊なトルクがあることが伝わってきます。

近年、ここまでクロームを多用しているバイクも珍しいですが、それは自社でクロームメッキ加工を行なえるロイヤルエンフィールドならでは特徴かもしれません。

ロングストロークの349ccエンジン。深いフィンとアルミの素材特有の鈍い輝きが魅力。クランクケースは磨かないと曇ってしまいますが、オーナーになったら磨くことも楽しんでください。

このクラスのバイクとしては大きめのポジション。手も足もとても自然な感じで置くことができ、リラックスすることができます。筆者は165cm、68kg。

165cm、68kgの筆者がシート高805mmのクラシック350に跨った足つき。シート高が32mm下がるローシート(1万4080円)もオプションで用意。ロイヤルエンフィールドはこういったパーツが手に入りやすい価格なのも魅力です。
走るほどに強く漂う、クラシックフレーバー
タッチの良いギヤを1速に送り込み、軽いクラッチをリリースすると、クラシック350は回転を上げなくてもスルスルと発進します。速度が乗っても豊かなトルクが加速を後押しし、ギヤはすぐに4速や5速に入ります。2000〜3000回転でもギクシャクする感覚はなく、むしろ心地よさが身体に響くのです。
まさに「ピュアライド」を感じる瞬間です。交差点を曲がるのも楽しく、市街地の速度でもしっかりとロイヤルエンフィールドのスローガンを味わえるのです。
この心地よさに、キャリアの浅いライダーは「バイクって面白いな、気持ちいいな」と感じると思います。一方でベテランライダーは「わかってるな」と納得させられることでしょう。クラシック350に乗っているとこうしたシーンがたびたび訪れるのです。確かにパワーがあるバイクではありません。しかし、実用的な力は十分。むしろスペックが示す数値などそれほど大きな意味を持たないことがよくわかります。
そして、誤解を恐れずに言うと、乗り味にクラシックバイクらしいフィーリングはありません。なぜならば往年のバイクたちはこんなに豊かなトルクはないし、点火も燃調もこれほど洗練されていないからです。ただ、クラシックバイクの香りはするのです。この絶妙なバランスは脱帽です。ロイヤルエンフィールドは歴史と伝統を、最新技術できちんと再現させているのです。
現代に求められるクラシックな香りとは何かを探求しながら、そのフィーリングをとても大切に作り込んでいます。

シンプルなメーターまわり。デジタル部分にギヤインジケーターも用意。クロームとダークには簡易ナビのトリッパーが標準装備されます。

ヘッドライトナセルがクラシックバイクらしさを強調。ヘッドライト上部にはタイガーアイと呼ばれるポジションランプも用意し、今回のモデルチェンジでこちらもLED化されました。

前後フェンダーのメッキの仕上がりも美しい。

クラッチレバーの下側にはUSB-Cの充電ソケットも装備しています。
「ピュアスポーツ」の精神から学ぶ、バイクの楽しさの原点
クラシック350は、速度域を上げても安定感が高く、実はコーナリングの楽しさもしっかりと教えてくれます。
高速道路で本当に気持ちがいいと思うのは80km/hくらいです。しかし、100km/h巡行は楽勝です。エンジンの回転が上がりがちになりますが、100km/hの速度で一度安定すると、エンジンのクランクやフライホイールといったパーツたちに慣性力がつき、安定感が出てきます。このあたりの味付けも絶妙です。そこからスロットルを開ければ緩やかに120km/hを目指し、長時間でなければ巡航もできます。
峠では前19、後18インチの細タイヤが、素直なハンドリングを披露。排気量の割に重量があり大柄なこと、さらに高速道路での直進安定性を考えるとカーブでもっと鈍重な動きを想像しますが、とてもしなやかにカーブをトレースしていきます。
座り心地の良いシートに身体を預け、上半身はリラックス。進入では曲がりたい方を見るとスッと前輪に舵角が入り、立ち上がりでスロットルを開ければ後輪が路面を掴みぐいぐいと加速します。
このときポイントになるのは闇雲にエンジンの回転を上げないこと。高いギヤ、低中回転からスロットルをガバッと大きく開けると、空冷単気筒特有のトルク感が抜群のグリップと気持ちよさを提供してくれます。その時のエンジンは、生命の息吹のように脈打ちます。このなんともいえない温もりや優しさがライダーとクラシック350のコミュニケーションを密にし、「ピュアスポーツ」の精神を感じさせてくれるのです。
クラシック350との付き合いは、キャリアの浅いライダーにはバイクの楽しさを様々な形で教えてくれ、ベテランは乗り込むほどにバイク好きが作った感性に心を打たれるはずです。英国文化とインドの超大量生産が可能にする、高いクオリティと買いやすい価格が現代においてこれほど魅力的な1台を生み出すとは少し前までは想像もできませんでした。今、この感性のバイクを楽しめるのは、とても幸せなことだと思います。

フロントブレーキはシングルディスク。ブレーキのタッチに尖ったところはなく、とても扱いやすい特性です。

このクラスのバイクの中ではとても上質なシートを採用しています。

スポーツホイールがしなやかなハンドリングに貢献。モデルによってはキャストホイールになります。

後ろ側にもペダルがあるのは、インドのバイクならでは。インドではサンダルで乗るライダーが多く、かかとでシフトアップができるようになっているのです。

クロームとダークは左右レバーに調整式を採用しています。
5シリーズ、7色のバリエーションを用意
クラシック350は「クローム」「ダーク」「シグナルズ」「ヘリテージプレミアム」「ヘリテージ」の5シリーズを用意。クロームとダークはLEDウインカー、調整式クラッチ&ブレーキレバー、簡易ナビのトリッパーを標準装備しています。ダークは唯一のキャストホイール仕様でイメージを一新。自身のスタイルに合わせたモデルを選ぶことが可能です。

クラシック350クローム(エメラルド)/72万8200円

クラシック350ダーク(ガングレー)/72万3800円

クラシック350ダーク(ステルスブラック)/72万3800円

クラシック350シグナルズ(コマンドサンド)/70万1800円

クラシック350ヘリテイジプレミアム(メダリオンブロンズ)/69万8500円

クラシック350ヘリテイジ(マドラスレッド)/69万4100円

クラシック350ヘリテイジ(ジョードプルブルー)/69万4100円
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