兄貴分は過剰で弟分では物足りない MT-07を選ぶのは大きなワケがあるのだ!!

ヤマハのラインアップにおいてストリートファイターセグメントを任されるMTシリーズ。その中でも突出しているといえるトータルバランスの高さに定評を持つのがMT-07です。
2025年モデルではビッグマイナーチェンジが図られ、各種ブラッシュアップが行われたほか、MT-09に続きヤマハのオートマチックトランスミッションを搭載したY-AMTモデルが追加されました。
実は新型MT-07従来モデルからの変更点が満載で、そのことにより大きく走りの面も変化しています。
そこで今回は新型が従来のMT-07からどのように進化をしているのか詳細を深堀りするとともに、乗り味や使い勝手を踏まえたうえでライダーとのマッチングも探っていきたいと思います!

日常的な使い勝手の良さもあり、 多くのファンに支えられてきました!

今から約10年前となる2014年、当時ヤマハが掲げた”MT(マスター・オブ・トルク)”という新たなコンセプトでMT-09に続く第2弾として初代MT-07は登場しました。

クロスプレーンコンセプトによって作られた688cc水冷並列2気筒エンジン、通称CP2エンジンを搭載した初めてのモデルであり、その後このCP2エンジンを使用した車両は、YZF-R7テネレ700XSR700と広げられたことからも、いかにヤマハが力を込めたパワートレインであるかが伝わってきます。

MT-07は初代モデルから軽量かつスポーティなキャラクターでありながら、扱いやすさや抑えられた価格で人気を博してきました。

どうしても兄弟モデルであるMT-09と比較されることが多いのですが、実際に乗り比べてみると方向性こそ同じだと思えますがキャラクターは明確に異なっていることが分かります。
MT-09は強力なエンジンパフォーマンスとそのパワーを受け止めるために鍛え上げられたシャシーからスパルタンなフィーリングをもたらすのに対して、MT-07は市街地からワインディングロードまで極上のヒラヒラ感を楽しめるライトウエイトスポーツモデルとしてまとめられています。
MT-07はサイズ感、出力特性ともにストリートユースに適しており、通勤、通学など毎日使用するようなライダーにもおすすめできるのです。

なおこれまでに2018年、2021年とモデルチェンジが行われ、2025年のMT-07は第4世代となりました。

見た目も中身も大きく進化! 新型MT-07は別物といえる仕上がり!?

現行型のMT-09が昨年登場した際に、フロントマスクの形状が大きく変更されたのを見た私は、”近い将来MT-07も続いて顔つきが変わるだろう”と予想していたのですが、それが見事に的中しました。新型MT-07はMT-09と近しい能面スタイルでまとめられ、よりソフィスティケートされた印象を受けるものとなったのです。
好みは分かれるところですが、個人的には歴代MT-07の中でも“好みの顔”です!

車体を確認すると、まずフロントサスペンションが倒立フォークに変更されたことに気づきました。それに伴い、ブレーキキャリパーはラジアルマウントとされています。
さらにフレームやスイングアームも新設計とされており、12~13%の剛性を向上させつつ、重量は従来モデルと同等に抑えています。

またがってみるとライディングポジションも変更されており、ハンドルはより幅が広く、そして低くセットされています。

専用アプリとの連動が可能な5インチTFT液晶ディスプレイの採用や、スイッチボックスの変更なども行われています。

パッと見た全体のイメージでは、従来のMT-07から大きな変更はわからないのですが、細部をよく見ると、別物的な仕上がりとなっているのが、新型MT-07なのです。

それでは実際に走らせて感触を確かめていきましょう。

全体的にグレードアップした走り それをどう捉えるかが肝!!

これまで歴代のMT-07の試乗テストを行ってきました。初代モデルは低コストでありながら超軽量としたことで、身の丈スポーツバイクとしての魅力にあふれていましたし、その後はパフォーマンスを引き上げつつもMT-09と明確なキャラクター分けがもたらされてきました。

直近ですと半年ほど前に最終型となる従来モデルに触れる機会があり、オフロードモデルのようなライディングポジションと挙動に、スーパーモタードモデル的なキャラクターに昇華した! と感じていたものですが、今回テストを行った新型MT-07は別次元のスポーツモデルに仕上がっていました。

まずCP2エンジンに関して基本的な変更箇所はないのですが、今回MT-07で初となる電子制御スロットルを採用しており、スポーツ/ストリート/カスタムとライディングモードを変更できるようになっています。これにより、ライダーの好みのセッティングを行えるようになりました。

足回りのセッティングは煮詰められたというよりも、ごっそり換装したという感触があります。まずフロントは従来の正立フォークでも十分だったのですが、今回倒立フォークとなったことで、剛性感が増しています。特に高速域での接地感は素晴らしいものです。ただ一方で、低速走行時の突き上げがダイレクトに伝わってくるようにもなっていたことが気になりました。

そしてフレームとスイングアームの変更からリアサスペンションのインフォメーションは輪をかけて向上しています。

手足感覚”がより一層引き上げられ、深々とバンクさせることが気持ち良いために、ついついコーナーを求めて走り回ってしまいます。

付け加えてサウンド面のチューニングも絶妙で、アグレッシブでありながらも、ライダーを気持ちよく陶酔させてくれるようなエキゾーストノートが伝わってくるのです!

走りの面と装備、全体的にワンランクグレードアップした印象を受けますが、従来モデルが備えていた良い意味での“雑味”が薄れたことは少々さみしくも思えます……。

選ぶべきは『Y-AMTモデル』。 皆移行するのは時間の問題ですよ!

実はここからが、新型MT-07の本題に入るのです。それは、今回初めてY-AMTモデルが追加されたことにあります。

Y-AMTという装備を聞きなれない方も少なくないと思いますので簡単なおさらいをしておきますと、昨年MT-09で初めて採用されたヤマハの新しいオートマチックミッション(自動変速機構)で、クラッチレバーやシフトペダルが装備されていません

発進から停車までスロットルワークだけで走らせることができるので、大変イージーです。それでいながらも、ハンドル左手側に用意されたシフトチェンジスイッチを使用することで、マニュアル的なシフト操作も可能なのです。

昨今、他メーカーもオートマチックトランスミッション化の波が押し寄せており、年中新車インプレッションを行っている私もかなりの頻度でオートマモデルの試乗を行うようになったので、今回の新型MT-07も、あえてY-AMTを選んだのです。
これまでMT-07をはじめとしたCP2エンジン搭載モデルに乗ったことがある方は、きっと”シフトペダル操作が渋い”と感じたことがあると思います。
本当にCP2エンジンは素晴らしいフィーリングなのですが、シフトチェンジをする際に上手くギアが入らす”あれっ”と思うことが時折あったのです。

自動変速機構であるY-AMTではそもそもシフトペダルがないため、その渋さを感じることがありません。それよりも、自身でクラッチレバーやペダルを操作するよりも、的確かつスムーズなシフトチェンジを行ってくれます。

スロットルをワイドオープンするとシフトアップをせず高回転まで引っ張ってくれ、とてもスポーティに走れるうえ、マニュアルモードにセットすれば、スロットル操作でフロントアップさせることも可能です!

ちなみに約1週間にわたる試乗テストで、満タン法により算出した燃費は、約30km/L。低燃費具合もなかなかのものです。

イージーライドをもたらしながら、スポーツバイクならではの楽しさをしっかりと味わうことができる。MT-07 Y-AMTに乗ると、もはやオートマ化の波は受け入れるべきものだと感じます。

独断と偏見で伝えたい ”勝手にGood&Bad!!” テストライダー小松男が独断と偏見で決めるグッド&バッド。

これまでの従来モデルから大きく進化した新型MT-07には文句の付け所がありません。昨年モデルチェンジした現行MT-09の完成度が高く、MT-07を大きく引き離した! と思っていたのですが、今回のMT-07は選択を悩ませるどころか、むしろこっちの方がコンパクトで日常的に扱いやすく、しかもスポーツ性は格段に引きあがったので推せると思うほどです。

そんなスキなしの新型MT-07のグッドポイントは、Y-AMTモデルが用意されたことです。10年くらい前までは、各メーカーの自動変速機構の動作がまだ荒く感じられ、モーターサイクル業界のオートマ化はまだまだ先のことだと思っていたのですが、Y-AMTの完成度やMT-07のキャラクターとの相性はとてもよく、もはやマニュアルミッションモデルよりもY-AMTモデルの方が魅力的に思えます。

バッドポイントは、そのY-AMTをマニュアル操作する際のシフトダウンスイッチが、ターンシグナルやホーンボタンと押し間違えてしまうことがあることです。
ただこれは慣れの問題でもあるので、バッドというほどのことでもありません。

最新が最良! これは事実ですが、 値段のこなれたユーズドもアリです!!

先日、バイク系ユーチューバー女子とお仕事をする機会がありました。その方はこれから大型自動二輪免許を取得するところだと言い、免許を取ったら何を買おうと考えているのかを聞いたところ、MT-07が気になっているとのことでした。

ちょうど今回のMT-07 Y-AMTの試乗テストをした直後だったので、Y-AMTモデルをお勧めしたところ、クラッチレバー操作は手がつかれるしシビアな入力も強いられるので、オートマならばその分ストレスが減りライディングに集中できると興味を示してくれました。

つまり新型MT-07は従来モデルと比べて、スタイリングの精悍化に始まり装備面が格段に進化したこと、それに伴い走行性能も引き上げられていること。
これらの基本的要素に加えて、Y-AMTというオートマモデルが用意されたことが大きなポイントであり、それによる選択肢の広がりを見逃してはならないということなのです。

しかし新車価格を見てみると、従来型のMT-07からスタンダードモデルで8万8000円の値上がりとなっており、Y-AMTモデルはスタンダードモデルと比べてさらに8万8000円高の105万6000円です。
ただ装備面を見てみると、価格差相応以上のものが採用されているのも事実なのです。

よって私が出した結論としては、従来モデルのオーナーが新型に触れると、その進化具合に買い替えたくなるほど驚くことがまず挙げられます。
そして従来モデルは、コストを抑えつつ本当に楽しく走らせることができる良いスポーツバイクであったことを再確認できたこと、中古相場を見てみると40~50万円台の個体も多く、手を出しやすいという魅力があるのです。

初めての大型バイクとして最適なMT-07は、幸せなバイクライフが約束されていますよ!!

MT-07 Y-AMT[2025]の基本スペックをチェック!

MT-07 Y-AMT[2025]主要諸元
・全長×全幅×全高:2,065×780×1,110mm
・ホイールベース:1,395mm
・シート高:805mm
・車重:187kg
・エンジン:水冷4ストローク直列2気筒DOHC 688cc
・最高出力:73PS(54kW)/8,750rpm
・最大トルク:68Nm/6,500rpm
・燃料タンク容量:13L
・変速機:Y-AMT(常時噛合式6段リターン自動変速)
・ブレーキ:F=ダブルディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70ZR17、R=180/55ZR17
・価格:105万6000円

 

 

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