
モーターサイクル? ビッグスクーター? それともアドベンチャーモデル? その独特なスタイリングから、様々な疑問をいだいてしまうホンダ・X-ADV。
2012年にホンダが掲げたニューミッドコンセプトというテーマのもとに誕生したNC700S、インテグラ、NC700Xの3モデルがあり、その中のインテグラから派生して2017年に初代X-ADVが登場しました。
個人的にはモックアップだけで終わるコンセプトモデルだと思っていたのですが、実際に販売されて街を走っている姿を見かけた時には、良い意味でショックを受けたものです。
僕も試乗テストを行ったことがあるのですが、2025年モデルではマイナーチェンジが図られており、より快適に、そしてスタイリッシュになったということ。
どのような仕上がりになったのか気になったので、今回はX-ADVの最新モデルをご紹介!!
目次
唯一無二の存在感で惹き寄せる 弟分もいるけれど、本家は別格!!

昭和生まれアラフィフバイク乗りとしては、バイクやクルマのみならず学歴や勤め先などで評価されるスペック至上主義がはびこる中で育ったため、いまだに”最高速”や”最高出力”などをチェックしてしまいがちです。
だから今回のX-ADVの元となったニューミッドコンセプトシリーズが登場した時には、いまひとつ釈然としませんでした。
それというのも、ホンダのコンパクトカーであるフィットのエンジンを半分にすることに着想を得た燃費重視の2気筒エンジン、いわゆるノークラシステムであるDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)、さらに直接の先祖にあたるインテグラに関して言えば、とても中途半端に見えるスタイリング。“なんだかパッとしないなあ”と言うのが第一印象。
NC700Xこそヒットモデルとなりましたが、インテグラは欧州で受け入れられたものの国内ではほとんど見かけることはありませんでした。
ただその後のX-ADVの登場は衝撃的でした。見るからに異端なデザインはアドベンチャーモデル的なワイルド感があり足元はクロススポークホイールにセミブロックタイヤが装着され、サスペンションストロークも大き目。それがスクーター的なパッケージングとされているのですから、唯一無二の存在です。
このデザインパターンはやはり注目度が高く、その後小型コミューター界の巨人であるPCXをベースとしたADV150(現160)が登場しそれも人気を博していますが、本家本元であるX-ADVの押しの強さには敵いません。
2021年にフルモデルチェンジが行われ、 2025年モデルは各部が改善しています!


X-ADVは2021年にフルモデルチェンジが行われています。その内容は新設計フレーム、バイワイヤスロットル、スタイリング、4~6速のロングレシオ化、ライディングモードにグラベルを追加などなど、これ以外にも多岐に渡りバージョンアップが図られており、見た目こそ従来モデルの意匠を受け継いでいるものの、走らせてみると格段に乗り味が良くなっていました。
そして今回テストを行う2025モデルでは、スクリーン形状の変更とスクリーン高さ調整ノブの改善、それらに伴うフェイスマスクのリフトアップ、それとシート形状の見直しやクルーズコントロール、専用アプリのHonda Road Syncと接続できる5インチフルカラーTFT液晶メーターなどが装備されています。今回のアップデートの中でも特に注目なのはDCTの制御をリセッティングしていることです。
想像以上のハンドリングマシン ガンガン走って楽しい一台なのです!!




X-ADVのシート高は初代モデルから現在まで一貫して790mmとなっています。800mmを下回っているので、数値的には抑えられているのですが、初代モデルはシートが結構高いと感じていました。現行モデルはというと、シート形状そのものの見直しにより足つき性は改善されています。付け加えるならば、薄く見えるシートですが、長時間乗っても疲れにくかったです。
エンジンを始動し走り始めると、高めの位置にセットされワイドなハンドルバーと着座位置の関係性による、他のモデルとは違うライディングポジションに違和感を覚えますが、慣れるとこのライポジがかなり良く考えられているということが分かってきます。
例えばクルーズはツアラーモデルのようにいたって安楽。ワインディングでスポーツライディングを楽しむ際には、外ひじを突き上げてリーンアウトでコーナーを駆け抜ける、モタード的な走り方を楽しめます。さらにはオフロードに持ち込んだ際にスタンディングポジションも取ることができてしまうのです。これほど自由度が高くスポーツ、オフ、クルーズをこなせるモデルは実は既有な存在です。
X-ADVでスポーティなライディングを楽しめるということを人に話すと「ニーグリップができないじゃない」と言い返されることが多いのですが、センターアーチ部分をふくらはぎで抑え込むことで車体をしっかりとコントロールすることができるのですよ!
脳で考えたことが直結反応!! DCTの制御ここに極まり!!




昨今、多くのメーカーが乗り出しているオートマチックトランスミッションの開発ですが、ホンダはいち早く取り入れてきたパイオニア的存在でもあります。
最初にDCTを採用したのは2010年のVFR1200Fで、二輪車用DCTとしては世界初でした。ただマニュアルミッションに慣れた身としては正直なところ違和感があったこと覚えています。それはその後に登場し今回のX-ADVに繋がるニューミッドコンセプトの初代モデルたちも同様でした。
しかし年々バージョンアップを繰り返し、近年ではかなりのダイレクト感を得られるようになっています。
2025モデルのX-ADVで行われたDCT制御のアップデートもかなり良く、ライダーが求めるトルクの美味しいところを上手く料理し路面に伝えてくれますし、制御が難しいであろう半クラ状態をスロットル操作だけで意のままに生み出せます。
これは大きなポイントで、どのようなステージを走らせても、アクセルワークに集中することができるために、マニュアルミッションモデルと比べて格段にストレスが無いのです。
特に驚いたのはオフロードでの走行時で、クラッチワークを行わずとも、しっかりとトラクションを路面に伝えてくれるので、未舗装路に苦手意識を持つ方でもきっと楽しく走れることと思います!
独断と偏見で伝えたい ”勝手にGood&Bad!!” テストライダー小松男が独断と偏見で決めるグッド&バッド。


もはや完璧な仕上がりを感じたX-ADVで、特に良い点とイマイチな点を挙げてみましょう。
グッドポイントはキリがないほどあるのですが、なんといっても個性的なスタイリングがX-ADVのキャラクターを表しており、他には無い強烈なインパクトを見る者に与えてくれます。
好みはあると思います。僕の場合インテグラはイマイチで、X-ADVはとてもアリなのです。
バッドポイントは色々と悩んだ末に、シート下のメットイン(ユーティリティ)スペースにしました。いやぁ、もちろんとても便利なのです。一度使うとなくてはならないと思える装備なのですが、まずシートの開閉幅が狭くものを入れにくい、さらにETC2.0車載器の取り付け位置によって、ヘルメットが入らない、もしくは入れにくいのです。
多分これは改善できる部分なのでホンダさん是非次のモデルチェンジでご対応を!!
速い、快適、カッコイイの三拍子が完成 そろそろ爆発的ヒットの予感!?

メットイン、グリップヒーター、可動式スクリーン、クルーズコントロール、最高のDTCなどなど、欲しい装備がすべて揃っているX-ADVは、食べたいものが全部詰め込まれた幕の内弁当的なバイクです。
ホンダさんに車両を返却しに行った際「本当なら返したくないです」と担当スタッフさんに言ったことも本当です。
ライバル的なバイクを考えてみたところ、唯一無二的な存在であるために、従来モデルのX-ADVが筆頭となると思います。同門ならばNC750X、あえて挙げるならTMAX560あたりでしょうか。ただそれらよりも、全部盛感はX-ADVの方が高いのです。
そろそろ、みんなX-ADVがヤバいバイクだと気づき始めて、爆発的なヒットとなりそうな予感がしているのですが、新車の車両価格を見てみると143万8800円~……。気軽に買える価格ではないのですね。
とはいえ、現行X-ADVは満足度の高い仕上がりとなっていますよ!
X-ADV[2025]の基本スペックをチェック!
X-ADV[2025]主要諸元
・全長×全幅×全高:2,200×940×1,340mm
・ホイールベース:1,580mm
・シート高:790mm
・車重:237kg
・エンジン:水冷4ストローク単気筒OHC 745cc
・最高出力:58PS(43kW)/6,750rpm
・最大トルク:69Nm/4,750rpm
・燃料タンク容量:13L
・変速機:電子式6段変速(DCT)
・ブレーキ:F=ダブルディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70R17、R=160/60R15
・価格:143万8800~147万1800円
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