
2024年12月に登場したカワサキ・KLX230シェルパ。令和ライダーには聞き覚えの無い新型車両だと思うのですが、昭和ライダーからすると”あのシェルパがついに復活した!”と思えてしまいます。
そうなのです。そもそもシェルパは90年代に登場したスーパーシェルパというモデルの現代版にあたるモデルであり、このたび17年ぶりの復活となりました。
旧モデルにあたるスーパーシェルパは頑丈で走破性の高いトレッキングバイクとして高い人気を得ており、林道ツーリングなどを楽しむオフロードファンを中心に今もなお支持されているのですが、果たして新たに登場したKLX230シェルパはどのような仕上がりになっているのでしょうか!?
目次
兄弟モデルが一気に登場した中で “シェルパ”の位置づけは!?

昨年KLX230シェルパ(以下:シェルパ)がブランニューモデルとして登場したのと並行する形で、KLX230、KLX230S、KLX230SMという兄弟モデルが用意されました。
きっと多くの方が「みんなKLX230という車名だけれど、どのような違いがあるのだろう?」と思ったことでしょう。そこで簡単にそれぞれのモデルの特徴から書き記していきたいと思います。
まずKLX230ですが、ペットネーム的なものやイニシャルがつかないために、ベースモデルやスタンダードグレードだと思われがちですが、シリーズ中最もオフロード走破性能が高められた仕様となっています。それはロングストロークサスペンションを採用したシート高の数値からも現れており、シェルパが830mmなのに対してKLX230は885mmとかなり高く、オフロードモデル=足つき性が悪い、という典型的なスタイルとなっています。ただし、その分オフロード性能は秀でているのです。
KLX230Sはというと、ショートストロークサスペンションに変更しシート高を830mmに抑え足つき性を改善。そのためにストリートユースから林道ツーリングまで幅広くカバーするデュアルパーパスモデルとなり、ビギナーライダーや普段の通勤通学から未舗装路まで楽しめる仕様となっています。なお、価格はKLX230とKLX230Sは同じ59万4000円です。
KLX230SMは前後17インチタイヤとしたいわゆるモタードモデルです。ストリートユースがほとんどで、オフロード走行はあまり考えていないというライダーならば、きっとこのモデルを選ぶと良いでしょう。市街地に映えるカラーバリエーションなどもポイントです。
そして今回取り上げるシェルパは、KLX230Sをベースとしながら、オフロードツーリングなどで活躍するナックルガードやリアキャリアを標準装備したモデルとなっています。価格的には63万8000円となっていますが、KLX230Sに同じオプションを追加するよりもお得なのです!
冒険心を掻き立てる オフロード走行を考えたパッケージ


シェルパは、細身でシートが高く、アップタイプのフェンダーが備わっており、バーハンドルという構成の、いわゆるオフロード(未舗装路)バイクのスタイリングをしています。
この“オフロードバイクのスタイリング”というくくりこそクセモノで、疎い方からするとどれも同じように見えてしまうのですが、走らせてみると意外なほど異なることが分かります。
四輪のマーケットで例えるならば、SUVとクロスカントリーは見た目的には似ているものの方向性は違い、多くのSUVはオフロード性能に関してそこまで特化しておらず、一方のクロスカントリーモデルはオフロード走破性をしっかりと考えて作られています。
ではどこでオフロードバイクなのか、それとも”ルック”なのかを区別する方法なのですが、私の場合は、まず諸元表のタイヤサイズや最低地上高やサスペンションストローク量を確認します。
オフロードバイクのスタイリングをしていても前後17インチかつ太目のタイヤを履いていればそれはオンロード志向と考えてもそん色ありません。オフロード走行を視野にしているならばフロント19インチ以上は欲しいところですし、本格的なものになれば21インチタイヤを採用しています。最低地上高で言えば200mm以上は確保しておいてほしいところです。
あくまで軽二輪バイク(125~250cc)を対象としていますが、大型バイクであってもこれらのポイントを注目してみるとオフロード走破性の指標とできます。
そのような中シェルパはどうかと言うと、フロント21インチ、リア18インチタイヤを採用しており、最低地上高は240mmと本格派であることが伝わってきます。
なお、タイヤサイズはKLX230、KLX230Sと同じ、最低地上高はKLX230の方が25mm高く設定されています。
新車で買えるこの手のモデルは 実は少ないのですよ!




未舗装路のコースを周回し競うようなモトクロスモデル、オンロードとオフロードの要素を半分ずつ取り入れたスクランブラーやデュアルパーパス、ロングツーリング性能を高めたアドベンチャーなど、オフロードバイクと呼ばれるモデルにも種類は色々とあるのですが、そのような中シェルパはと言うと、トレッキングバイクという位置づけで間違いないと思います。
一般的にトレッキングとは山の中を歩くことを意味しており、ストローク量の多いサスペンションや未舗装路に食らいつくブロックタイヤ、低回転で粘りのある空冷エンジンなど、シェルパは山の中を走らせるのにピッタリの装備が備わっています。
これはモトクロスのように飛んだり跳ねたりするような使い方ではなく、トコトコと景色を楽しみながら走る林道ツーリングなどに最適なオフロードバイクとなっているのです。
以前はヤマハ・セローやホンダ・XR230などのライバルモデルが存在していたのですが、現在は不在。それはシェルパが広く注目されている要因の一つになっているとも思いますよ。
凶暴さは無くフレンドリー、 初めてのオフロードバイクにも最適!




それでは実際にシェルパに触れた印象をお伝えしていきましょう。
まず車重が軽く、取り回しが容易です。
シートは傍から見るとかなり高いと思えるのですが、跨ってみると体重による沈み込みが強く、身長177cm、体重70kgの私の場合足つき性に関してはまったくと言っていいほど気になりません。後述しますが、未舗装林道などを走らせると、むしろこの沈み込むサスペンションと足つき性の良さが武器となっていました。
230cc空冷シングルエンジンは、スロットル操作だけでフロントが浮き上がるほどのパワーは無いものの十分な速さと粘り強いトルクを得られ、ローギアードなミッションと相まってストリートでも快活な走りができます。
教習バイクにあるような前後17インチのロードタイヤに慣れたライダーには、フロント21インチ、リア18インチの細身のブロックタイヤからなるコーナーリング時の立ちの強いハンドリングに、乗り始めは違和感を覚えるかもしれませんが、それもすぐに慣れることと思います。
総じて市街地でも使い勝手が良いと思いましたが、走らせているとシェルパはどうしても未舗装路へと誘ってくるのです。
なので走ることができる河川敷に入ってみたり、林道を探して繋いでみたりと、ついついオフロード遊びをしたくなってしまいます。
そのオフロードに持ち込んでみると、さらなるシェルパの魅力が伝わってきます。ローギアードのミッションはストリートではややシフトチェンジが忙しく思えたものの、未舗装路ではサード(3速)あたりで固定してトコトコと走れますし、轍や凸凹道を乗り越える際に、優しく動くサスペンションはライダーとシェルパの一体感をもたらしてくれます。さらにガレ場やヌルヌルマディなど地面にちょっと足を下ろしながら進みたい場面でも足つきが良いので問題なし!
ビギナーでもオフロード走行を存分に味わえることは大きな魅力となっています!
独断と偏見で伝えたい ”勝手にGood&Bad!!” テストライダー小松男が独断と偏見で決めるグッド&バッド。


トレッキングバイクとしての魅力が溢れ出ているシェルパですが、中でもフロント周りの印象は良く、トレール量やキャスター角もドンピシャで楽しくオフロード走行を楽しめました。
もっとオフロード走破性能が高いモデルもありますが、足つき性の問題や、そもそも未舗装路が苦手というライダーには、むしろシェルパの方が扱いやすいと思えるはずです。
バッドポイントはこの手のオフロードバイクでは仕方ないのですが、燃料タンクが小さく、容量は7.6リットルと少ないことです。最近はガソリンスタンドも減少しましたし、林道ツーリングなどでは給油の心配はしたくないのです。
ただテスト車両を返却する際に給油し、満タン法による実燃費を計測したところ、1Lあたり48km(!?)も走れることが分かり、それならばタンクが小さくても問題ないと思いました。
毎日乗りたい気持ちになる林道キング! オフロード遊びに目覚めます!!


今と違い3、40年前まではどこに行っても未舗装路は残っていました。だからドライバーもライダーも意識せずともオフロード走行に慣れ親しんでいたのです。しかし今家を出て、普段の日常生活で使用する道のほとんどは舗装されています。
これは良いことなのですが、一方で舗装路しか走れない人も多くなりました。オフロードは路面状況によってタイヤが滑るシーンも多く、そうなることを制御し走破するためのセッティングがオフロードバイクであるシェルパには備わっています。
だからオフロード(未舗装路)に対して”なんか怖い”、”上手く走ることができない”と思っている方にこそ、シェルパをお薦めしたいのです。
オフロード遊びの最初の一歩としても適役、しかも乗れば乗るほど体に馴染み、いつの間にかエキスパートオフローダーに成長している。そんな良き相棒となってくれるはずです。
KLX230Sは走行性能的にはシェルパとほぼ同じなので、あくまで初期費用を抑えたいという方にはお薦めですが、シェルパのハンドガードやリアキャリアは魅力的であり、テントやアウトドアアイテムをリアに括り付けて、キャンプツーリングなどにも出かけたくなります!!
オフロードビギナーはまずこれ! エキスパートオフローダーも納得! それこそがシェルパなのです!!
KLX230シェルパ[2025]の基本スペックをチェック!
KLX230シェルパ[2025]主要諸元
・全長×全幅×全高:2,080×920×1,150mm
・ホイールベース:1,365mm
・シート高:845mm
・車重:134kg
・エンジン:空冷4ストローク単気筒SOHC 232cc
・最高出力:18PS(13kW)/8,000rpm
・最大トルク:19Nm/6,400rpm
・燃料タンク容量:7.6L
・変速機:常時噛合式6段リターン
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=2.75-21、R=4.10-18
・価格:63万8000円
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