モーターサイクル黎明期を支えた名門! 悠久の時を経てプレミアムコンパクトがここに復活!

昨秋11月にカワサキから発表されたメグロS1をご存知でしょうか!? もはやネオクラシックという枠を超越したと言っても過言では無い徹底的なオールディーズスタイルは、独特な世界観を醸し出しています。
なお、カワサキからは兄弟モデルというか、フレーム、エンジン、足まわりなどほぼすべてを共通パーツでまとめたW230もリリースされています!
メグロS1にしようかW230にするか悩んじゃう~という方も少なからずいらっしゃるので、今回はメグロS1の魅力を探りつつ、W230との違いなどにフォーカスしていきたいと思います!

昭和時代に統合したメグロブランド 令和に再び咆哮をあげる!

まずはカワサキとメグロというモーターサイクルメーカーの歴史や関係を簡単におさらいするところから始めましょう。

今から100年以上も前の話ですが、明治時代終盤には欧米から自動車やモーターサイクルが輸入されはじめ、馬車や人力車と共に街中を走り回る姿を見られるようになりました。
大正時代に入りアメリカからはハーレーダビッドソンやインディアン、エール、クリーブランドなど、イギリスからはノートン、ダグラス、BSA、その他の国からも様々なモーターサイクルが輸入され圧倒的な勢いで普及していく中、国産化への努力も全国各地で進んでいました
昭和に入り度重なる世界大戦により国産モーターサイクル製造は窮地に立たされることもありましたが、戦後には再び業界の動きは盛んになり、昭和30年までに全国で150ものメーカーが生まれたと言われています。
そのような国産モーターサイクル黎明期において大正13年に創業した目黒製作所(メグロ)はパイオニアメーカーのひとつに挙げられる存在でした。

一方のカワサキはというと戦後に軍用機開発製造を行っていた技術者たちにより本格的にモーターサイクル開発がスタート。小排気量モデルを中心にこの世に送り出していきます。そのような中、大型モデルを手掛けていたメグロと業務提携を結び、お互いの利点を活かした幅広いレンジの車両を販売していました。

しかしその後目黒製作所は業績悪化に陥り工場を閉鎖、カワサキに吸収合併されることとなります。

なお、カワサキが生み出した名車の一つとして今もその名が語り継がれるW1は、メグロのKシリーズ(通称スタミナ)をベースに改良が加えられこの世に送り出されたものとして知られています。

つまりメグロ無くして今のカワサキは無かったと言え、そのメグロブランドが令和になった現在復活したのです!

誰でも気軽に付き合えるサイジング それでいながら高級感もありますね!

2021年にK3が発表されメグロブランドは復活を遂げました。それから3年が経ち、今回取り上げるメグロS1が登場したのですが、S1において大きなポイントとなっているのは、なんといっても排気量230cc(正確には232cc)のシングルエンジンを使用しており、これはつまり普通自動二輪免許で乗れるということなのです。

メグロK3は800ccのエンジンを使用しているために、大型自動二輪免許が無ければ乗ることができず、メグロに興味はあるもののライセンスの問題で所有を諦めているという話も耳にしていたので、これは嬉しいことですね。

実際にメグロS1を目の前にするとかなりコンパクトにまとめられていることが分かるのですが、ブラックとクロームメッキで纏められたスタイリングから引き締まった印象を受け、かなりクール!
W230と共通ではありますが前後のフェンダーがスチール製であったりバランスウエイトが板タイプでなくホイールのスポークに挟むタイプが採用されているなどディテールからもこだわりを感じます

双子的モデルであるW230と並べてみても高級感という面に関してはメグロS1に軍配を上げたくなります。
リバッジモデルでありながら独特な雰囲気を持たされたメグロS1は、街中に置いても人目を惹きよせていました!

ソフトなライディングプレジャーの中に スポーティな一面も見え隠れ!!

個人的にはよくぞ空冷エンジンを採用してくれた! と思っています。年々厳しくなる環境規制に対応するには水冷化もやむを得ないと感じている節があるのですが、クラシックスタイルのモデルはやっぱり空冷エンジンが似合うのです!

排気量230cc空冷SOHC2バルブエンジンは、最高出力も18馬力と控え目のスペックであり、正直なところあまり期待をしていなかったのですが、想像以上に低回転域にトルクがあり粘ってくれるので力強くすら感じます。

前後サスペンションも必要にして十分な性能で、ストリートのクルージングだけではなく、ワインディングロードに持ち込んでスポーツライディングをしてもとても楽しいのです!

高回転まで回しても突き抜けるような爽快感を得られるようなエンジンキャラクターではないのですが、ストレスなくレッドゾーンまで吹け上がるので、高速道路の合流などでも怖い思いをせずにすみました!

走行性能に関しては”これでいいのだ!” 全体的なスタイルは”コレが良いのだ!”

740mmと低く抑えられたシート高、アップライトなバーハンドルと、低めにセットされたステップなど、総じて乗りやすいパッケージングとなっています。
これならば免許取り立てのビギナーライダーでも気負うことなくハッピーバイクライフをエンジョイできると太鼓判を押します。

過剰な性能は無いのですが、走らせていて気持ち良いのです。心地よいペースでクルーズをしているとトラディショナルスタイルの英国車オーナーなど横に並んで覗き込んで、ここぞとばかりにパフォーマンスを見せつけて過ぎ去っていくような場面もありましたが、そんなことまったく気にならないほどストレスフリーな乗り味なところが好き。

それでいながら見た目からしてしっかりとしたプレミアム感が持たされているので割と熟年ライダーが乗っても似合ってしまうのです。
年中様々なモデルに触れてテストをしていますが、250ccクラスでこの感覚は他にはないですね。

ネオクラシックではなく オールディーズと私は呼ぶ!

昭和50年代生まれの私からするとメグロというのは、先述したW1へ続いたカワサキのルーツ的な存在であったことくらいしかイメージできないというのを白状しますが、メグロS1を見た時にまず思ったのはエストレヤの再来でした。

そもそも1992年に登場したエストレヤはメグロSGをモチーフとしたモデルなので、それこそ血脈的には同門と言えました。
初代エストレヤの登場時はレーサーレプリカやネイキッドブーム全盛期だったので、性能的にも見た目的にも今一つパッとしないモデルという感じでしたが、柔らかな見た目や乗りやすさから女性ライダーに人気がありましたし、カスタムベースとしても支持され四半世紀もの長きにわたり愛されたベストセラーモデルでした。

それがここにきてメグロS1、W230となって誕生したということは喜ばしいことです。
このように歴史を紐解いていくと、ネオクラシックなどというイマドキのセグメント分けとは一線を画した名門オールディーズなのだと私は感じるのです。

独断と偏見で伝えたい ”勝手にGood&Bad!!” テストライダー小松男が独断と偏見で決めるグッド&バッド。

細部までこだわって作られた素敵なスタイリングがメグロS1のグッドポイント!!
空冷シングルエンジンの鼓動感、時代を超えてきたようなディテールに、「これはいつ作られたバイクなのですか?」と声を掛けられたこともありました。
それが今、新車で買えるのは素晴らしいことです!

バッドポイントはシート下につけられたサイドカバーが左右に張り出しているため、足を下ろした際に、どうしても両足が広がりがちになります。
さほど重くないですしシートそのものは低いのですが、サイドカバーが足つき性をスポイルしていることには違いありません。

リターンライダーや そろそろ小排気量と考えている方へ

こう言ってはなんなのですが、メグロS1は思っていた以上に良く走る印象を受けたのです。自由度の高いライディングポジション、割と軽い車重、フロント18、リア17インチの細身のバイアスタイヤでクラシックスポーツらしいニュートラルなハンドリングなど、昔ながらのバイク作法に忠実に作られています。
それでいながら十分な制動力を誇るブレーキシステムやABSの標準装備、ETCインジケーターの採用など、現代的なポイントも散りばめられており、それが上手いバランスでまとめられているのです。
W230もいいけれど、ちょっと若々しいのでもう少し大人っぽいモデルが欲しいと考えているライダーも少なからずいらっしゃいます。
メグロS1はW230より7万7000円高価ですが、その差を納得できるエッセンスが散りばめられているので、余裕があればメグロS1を選ぶのは良い選択だと思います。
余談ですがW230とメグロS1を乗り比べてみましたが走りに関しての差は感じられず、どちらも良く走るモデルとなっていました。

メグロS1[2025]の基本スペックをチェック!

メグロS1[2025]主要諸元
・全長×全幅×全高:2,125×800×1,090mm
・ホイールベース:1,415mm
・シート高:740mm
・車重:143kg
・エンジン:空冷4ストローク単気筒SOHC 232cc
・最高出力:18PS(13kW)/7,000rpm
・最大トルク:18Nm/5,800rpm
・燃料タンク容量:11L
・変速機:常時噛合式6段リターン
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=90/90-18、R=110/90-17
・価格:72万500円

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