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気筒数による乗り味の違い、長所短所とは!?
バイクの乗り味はエンジンで決まると言っても過言ではありません。エンジンの排気量が大きくなれば当然パワフルになりますし、バイク自体の重量も増して大型バイクらしい堂々とした乗り味になっていきます。 ただ、もうひとつ大事な要素があります。それはエンジンのレイアウト(配置)による違いです。具体的には「気筒数」や「並べ方」になりますが、それぞれどのような特徴やメリットがあるのかを見ていきたいと思います。
【単気筒】シンプルさと鼓動感を楽しみたいなら
単気筒は一発一発の爆発が明確に伝わってくるのが特徴で、排気音は「ドッドッドッ」という感じ。乗り味は「味わい深い」とか「牧歌的」などと表現され、シンプルな構造のため軽量でスリムな車体を作られるのがメリットです。そのため、小排気量車やオフロードモデルなどによく使われていますし、コスト的にも安く作れるのでスクーターや「スーパーカブ」などの実用車にも幅広く採用されています。また、味わい重視のネオクラシックなどにも適したレイアウトになります。 半面、回転数を高めることが難しくパワー的にも限界がありますし、排気量が大きくなると振動も大きくなりがちです。代表的な車種としては「SR400」や「セロー250」「レブル250」などがあります。
【2気筒】味わいと性能がバランスしたスタンダード
2気筒は効率的でバランスの良いレイアウトと言われます。排気音は「ドコドコドコ」と不等間隔だったり「ドゥルルル」と細かい粒感があったり個性的で、「路面を蹴り出す感じ」や「トラクションに優れる」などと言われたりします。 これも点火順序や点火間隔で大きくフィーリングも変わるため一概には言えませんが、たとえば最近の直列2気筒(パラレルツイン)で流行りの270度クランクはあえて不等間隔爆発とすることでV型2気筒(Vツイン)のような鼓動感とトラクション(タイヤが路面をとらえる感覚)性能を高めていると言われています。 また、BMWやモト・グッツィのようにクランクシャフトを車体に対して縦に配置した「縦置きエンジン」も少数派ながら存在します。縦置きはシリンダーを左右に振り分けることで低重心化が図れ、クランク軸が車体と同じ方向を向いているため慣性力によって左右への倒し込みが軽いなどの特徴があります。また、クランク回転の反動(いわゆるトルクリアクション)により、アクセルオンで車体が右か左に傾ぐ傾向があるなどマニアックさも魅力です。 2気筒は小排気量から大排気量、スポーツモデルからクルーザーまで幅広く普及したレイアウトで、バイクのエンジンとしては最もバリエーションが広いと言えるでしょう。代表的な車種としては他にVツインで有名な「ドゥカティ」や「Vストローム」シリーズ、直列2気筒の新型「アフリカツイン」や「MT-07」などがあります。
【3気筒】2気筒と4気筒のいいとこ取り
3気筒は2気筒と4気筒の中間的な感じで、鼓動感とともに伸びやかな上昇感もあるなど、まさに「2気筒と4気筒の“いいとこ取り”」と言われたりします。直列3気筒が主流で、4気筒並みのパワーでよりコンパクトに作れるメリットがあります。 出力特性は基本的にフラットで中速域にトルクがあり、サウンドも4気筒より図太く2気筒より細やかで、滑らかさで中にも細かい脈動が感じられるタイプが多いようです。点火間隔も360度をちょうど均等に3分割した120度クランクが主流で、等間隔爆発によるスムーズな回転フィールが魅力。ときにロータリーエンジンに例えられることもあるほどです。 代表的な車種としてはトライアンフの「トリプル」シリーズや「MT-09」などが採用しています。変わったところでは同じくトライアンフの世界最大級クルーザーである「ロケット3」は縦置き3気筒を採用しています。
【4気筒】高回転まで突き抜けるパワーが魅力
4気筒は「フォーーーン」という甲高いサイレンのような排気音と「胸のすくような上昇感」が特徴です。一般的に気筒数が多いほど回転は滑らかになり、高回転で最も効率的にパワーを引き出せるレイアウトになります。点火間隔は180度が主流で、4本並んだシリンダーの真ん中の2本と両脇の2本がそれぞれセットで等間隔に爆発する仕組みになっています。高性能エンジンの代名詞でもあり、スーパースポーツなどの高性能マシンはほぼ4気筒を採用。 日本製バイクが伝統的に強い分野ですが、これも直列4気筒(直4)とV型4気筒(V4)とではだいぶフィーリングが異なります。大雑把に言うと、直4は高回転パワー型でV4は中速トルクに優れると言われたりします。また、V4は車体の幅をスリムにできるなどメリットもあります。一方で気筒数が増えると機構が複雑化し重量が増えるとともに製造コストもアップするというデメリットもあります。ということもあって4気筒は大排気量モデルや高級モデルに使われることが多いですね。代表車種としては各メーカーを代表する「スーパースポーツ」などはほぼ4気筒です。
【6気筒】シルキー6ならではの極上の乗り味
6気筒はシルキーシックスと呼ばれるように回転フィールは4気筒以上に滑らかで平滑。そのため、BMWの「Kシリーズ」や、かつての「Z1300」、「CBX1000」などの大排気量ツアラーに採用されることが多いです。ホンダの「ゴールドウイング」に至っては縦置き水平対向6気筒という独特のレイアウトを伝統的に貫いています。4輪を見れば分かるように、4気筒より6気筒、8気筒、12気筒と気筒数が多いほどプレミアムな高級モデルになっていきます。 ただし、その分大きく重くなっていくため、人が直接跨って操縦するバイクの場合は限度があります。ということもあって、現行の量産市販モデルでは6気筒が最大級で、車種としても前述のフラッグシップ系ツアラーなどに採用されるに留まっています。
目的や用途、好みで選べばいい
このように排気量は同じでも気筒数やその配置によって乗り味は大きく変わってくるものです。バイク選びも排気量やタイプだけでなく、エンジンレイアウトにこだわってみるのも面白いかと。 たとえば最近はミドルクラスが人気ですが、だいたい同じような排気量の「MT-07(直列2気筒)」と「CB650R(直列4気筒)」では、どちらが自分に合っているか悩む人も多いのでは……。ヒントとしては、小気味よい鼓動感が楽しめて、扱いやすいパワーでハンドリングも軽くコスパに優れるのがMT。一方、エキサイティングな高回転サウンドが特徴で、伸びやかなパワーとともに大型バイクらしい重厚さも味わえるのがCBといった感じでしょうか。それぞれに異なる魅力を持った2台ということが分かるでしょう。あとは自分の好みや目的に応じて愛車を選んでいただければ間違いないと思います。
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