さらばCB1300、ありがとうCB1300、ビッグネイキッドここに極まる【ホンダCB1300スーパーフォアSP 】

写真:長谷川徹

CB1300シリーズの生産終了が発表され、ファイナルエディションの受注に予約が殺到していると言います。いま改めて、ホンダが磨き続けてきたビッグネイキッド、CB1300SFの魅力に迫ります。

CB1300シリーズがついに生産終了

ビッグネイキッド。その響きはもうすぐ懐かしいものになってしまうのかもしれません。僕はそう思って1年ほど前にホンダCB1300スーパーフォアSPを借り出し、これまでのビッグネイキッドの歴史を振り返るようにワインディングを散策しました。

CBは節目節目でバイクの歴史を変えてきたホンダのアイコンです。1969年に登場したCB750Fourは世界のバイク情勢を一変させ、1992年に登場したCB1000SFはプロジェクトビッグ1のコンセプトを持って登場し、ビッグネイキッドブームを牽引

その後、1998年にはX4をベースとしたCB1300SFが登場。2003年には全てを一新し、エンジン単体で8kg、車体トータルで20kgも軽量化が行われ、2014年にはギヤを5速から6速にするなど様々な変更を受け、現在のベースとなるCB1300SFが誕生しました。車名はCB1300で共通ですがその中身は年代によって別物。そのため、中古車選びは慎重に行う必要があるでしょう。

写真は2024年モデルのCB1300スーパーフォアSP。赤フレームとゴールドの多用でかなり派手な仕上がりです。

こちらはCB1300スーパーフォアSPファイナルエディション(210万1000円)。販売店からの注文受付は2025年6月30日で終了となります。

CB1300はXJR12001300ZRX11001200GSX1400といったライバルたちと共に繁栄してきましたが、ライバルたちは随分前に生産を終えています。そしてついにCB1300SFSBもファイナルエディションとなり、販売店からの注文受付を2025年6月30日(月)をもって終了すると発表があったのです。ラストチャンスだけにホンダの想像を超える注文が入っているようです。

ここでいうビッグネイキッドとは、1000cc以上の並列4気筒エンジンをスチールフレームに搭載し、リヤは2本ショック、フロントは正立フォークのバイクのこと。ようは昔ながらの普遍的なバイクらしいスタイルと乗り味を持っているバイクのことです。ただこのビッグネイキッドカテゴリーは海外では受け入れられず、それも各メーカーが開発を続けられなかった理由の一つだったのかもしれません。

所有感と操作感を満たす、威風堂々としたスタイルが魅力。

エンジンは1284ccの水冷DOHC4バルブの並列4気筒。113ps/7750rpm、11.4kgf・m/6250rpmのスペックを持ちます。

乗り心地、ハンドリング、スタイリングの全てが磨き込まれたSP仕様

僕はCB1000SFから最新CB1300シリーズまで全てを試乗してきましたが、個人的なおすすめは、後年に登場した前後オーリンズサス&ブレンボキャリパーを採用したCB1300SFのSP仕様です。スポーツ・プロダクションの意味を持つSPはやはり古くからのライダーには特別な響きでしょう。

CB1300SF SPファイナルエディションの価格は210万1000円(通常のCB1300SFファイナルエディションは172万7000円)。CB1300SFデビュー時から比べると、価格はかなり上がっていますが、豪華足まわりや電子制御を考慮すると価格以上の装備を纏っており、コストパフォーマンスはかなり高いと言えます。

エンジンモードは「スポーツ」「スタンダード」「レイン」が用意され、トルクコントロールも装備。またクルーズコントロールグリップヒーターETCも標準装備され、ネイキッドとしてはもちろんロードスターとしての資質を磨き込んでいるのです。

SPが登場したことで走行性能は飛躍的に向上しました。SP登場時にブレーキホースの剛性アップやマスターシリンダーのサイズも改良されています。

走り出すと市街地でもギヤはすぐに5速、6速に入り、どこからでも湧き出すようなトルクを使って低いギヤで走ることができます。低いギヤで回転を上げる必要は皆無で、まさに余裕の塊です。大きな車体ですが走り出してしまえば重さはなく、ライダーの操作を正確に挙動として反映させてくれるため、キビキビと走らせることが可能。この巨体を軽々と扱えるフィーリングは快感の極みです。

ホンダはCB1300シリーズをCBのフラッグシップとしてきちんと育み続けてきました。誰もが「凄い」と思える性能や現代に見合う装備を与え、CBのフラッグシップとしてブランディングしてきたのです。だからこそファイナルエディションが再び注目を集め、CB1300シリーズの生産終了を惜しむ声が絶えないのだと思います。

車重266kgを取り回すにはそれなりのキャリアが必要。大きな車体ですが跨ると優越感に浸れるCB1300シリーズならではのポジションです。ライダーの身長は165cm、体重は68kg。

シート高は790mm。スタンダードよりもSPの方が10mm高く、跨った際の沈み込みも少なく感じるのはオーリンズ製サスペンションの影響でしょう。1300ccのバイクとしては、足つきは良好。僕のように小柄なライダーは両足で支えるより、腰をズラして片足できちんと支えると不安を解消しやすいと思います。ライダーの身長は165cm、体重は68kg。

優雅にも軽快にも走れる究極のビッグネイキッド

CB1300SF SPの魅力はワインディングでも健在でした。巨体は一瞬で向きを変えながら次々と現れるコーナーを簡単にクリアしていきます。市街地や高速道では優雅さに溢れていましたが、ワインディングでは優雅にも軽快にも走ることができます。ここでも巨体を軽々と扱える感覚はやはり快感です。

立ち上がりでは怒涛のトルクで力強く加速。これぞ大排気量の並列4気筒の醍醐味です。もはやエンジン性能に関しては磨き抜かれているといっていいでしょう。CB1300SF SPは高級なバイク、良いバイクに乗っているという単純明快さがあります。これは最近主流となりつつあるストリートファイター系ネイキッドにはない優雅さ。前後オーリンズ製サスペンションの動きはとても上質で、ブレンボ製ブレーキはコントローラブル。とても良い仕事をしてくれています。

前後サスペンションはオーリンズ製。伸び側&圧縮側の減衰力やプリロードを調整することでより好みのフィーリングを追求できます。

軽快にも優雅に走れるCB1300SF SP。4-1集合のマフラーが重厚感のあるエキゾーストノートを奏でます。

スピード&タコメーターはシンプルなアナログ式。昔ながらのスタイルを踏襲しつつも近代的なデザインを採用しています。センターのデジタル部分にはギヤポジションやモードを表示。

走り込むほどにCB1300SF SPは、CB1000SFがデビューした1992年に与えられた「プロジェクトビッグ1」の使命を受け継いでいることがわかります。エレガントかつワイルド、そして走るライダーの心を魅了する感動性能を改めて思い出させてくれるのです。

安定感と重厚感、そして大排気量4気筒の存在感は、他に変え難い魅力に溢れています。そしてSP仕様が登場したことでライダーが操っている醍醐味は飛躍的に向上しました。個人的には今、最もホンダを象徴する存在とも言えますし、伝統のビッグネイキッドの最終形がCB1300シリーズになる可能性は極めて高いと思っています。

CBの名前はまだまだ受け継がれていくでしょう。しかし、走るほどに「鉄フレーム」「2本ショック」「大排気量並列4気筒エンジン」のパッケージが希少であることが伝わってきます。6月30日の注文受付締め切りにはまだ少しだけ猶予があります。この迷える時間が残されていることが、今の最大の贅沢な楽しみなのかもしれません。

クルーズコントロールも標準装備。旅の快適性を大幅に向上させてくれます。

5段階の温度調節が可能なグリップヒーターも標準装備しています。

燃料タンクのトップには「PROJECT BIG1」の文字が刻まれます。1992年から続くビッグ1コンセプトの終焉はやはり寂しいものです。

ホンダが追求してきた「これこそがビッグバイク!」という存在感とハンドリングを多くの方に知っていただきたいと思います。

見た目は大きいですが、実際に触れると想像以上にフレンドリー。センタースタンドも標準装備しています。

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