2010年に初代モデルが登場し、瞬く間に世界中で大ヒット。一気にスターダムを駆け上がったホンダ PCX。
現在では原付二種クラスのPCX125(以下正式名称のPCX表記)と排気量を拡大したエンジンを搭載するPCX160をラインアップしています。
私は新車・中古車のマーケット動向をリサーチする仕事も請け負っているのですが、50cc以上のスクーターカテゴリーにおいてPCXはずっと首位をキープしておりまさしく不動の地位を築いています(PCXとPCX160合わせた台数)。
どうしてこれほどまで世の中のライダーたちに支持されているのでしょうか。今回はPCX160をお借りし実際に試乗テストを行いながら、その人気のヒミツを探っていきたいと思います。
目次
中途半端な排気量?まだそんな風に思っているの?
先日PCX160の試乗テストをしていると周囲の知人に話したところ「160ccのスクーター?中途半端な排気量だなあ」と言われました。私は「えっ!? まだそんなこと言っているの?」と返しました。加えて失礼なことを承知の上で、そう考えているのは”ナンセンスだ!”とはっきり言ってあげました。
まあ125ccであれば原付二種区分ですし、それ以上であれば車検制度が適用されない250ccクラスが欲しくなるという気持ちも分かりますし、私の考え方や言動に語弊があることも承知の上での話なのですが、少なくともここ10年程の間に150~200cc程度の排気量のエンジンを搭載したスクーターが世の中的には市民権を得たことは間違いのないことであり、むしろそのクラスがメインストリームになっています。
そのような中スクーター界のトップランカーとして君臨しているのがPCX160なのです。初代こそ125ccモデルのみでしたが、2012年に現在のPCX160に続くPCX150が追加されると、これもまたヒットモデルとなりました。
実は今回のテストではPCX150とPCX160のどちらを取り上げるか結構悩みました。しかし先述したように、排気量やサイズ的に中途半端だと思っている方が少なからずとも存在しているようなので、それならば徹底的に探ってみようと考えてPCX160を選んだのです。
頻繁な改良は”売れている証”!最新モデルが最良なのです!!
現行型PCX160は2021年に登場しました。その際エンジンの排気量は7cc拡大し156ccとなり最高出力も向上。軽量かつ剛性力のバランスをリセッティングした新型フレームの採用や、トラクションコントロールを装備するなど、大幅に手が加えられました。
ベーシックモデルであるPCXは登場から約15年でマイナーチェンジを合わせると現在5代目となります。エンジンの排気量こそPCX160は違いますが、基本的な変更点というのはPCXに準じているので、同じようにPCX160も進化してきたと言えます。
度重なる改良は裏を返せば、それだけコストを掛けることができるということでもあり、つまりは”売れている証拠”であるとも考えることができるのです。
※ここでいうトラクションコントロールとはホンダ社独自のHSTC(ホンダ・セレクタブル・トルク・コントロール)を指し、簡単に説明すると後輪のスリップを防ぐ電子制御機能のことです。
異端とも思われたスタイリングは、今なお最先端で魅力的です!
いまから10年以上も前のこと。私は登場したばかりのPCXを初めて見て、“変なカッコw”と思ったことを今でも覚えています。
なぜそう思ったかと言うと、原付二種クラスのスクーターは足を置くところがフラットなステップボードタイプが主流であり、車体の中央が出っ張っているセンターアーチがあるタイプは250ccクラス以上のいわゆるビッグスクーター系というイメージがあり、それでいながらも、フロントマスクはコンパクトで車体そのものはスリムなので、”今までに無い”感がプンプンでした。でも結果的にはソレがウケたのです。
当時、頻繁に海外出張に出ていたのですが、韓国、タイなどのアジア圏では日本以上にPCXのカスタムが盛り上がっており、しかもオーナーズクラブのミーティングやツーリングなども良く遭遇したものです。
ユーザーの間で人気のあるカスタム、例えば灯火類のLED化などはすぐさまメーカーがモデルチェンジ時に対応しLEDライトを採用するなど(これにはLEDのコストが下がったことや使用電力問題などの要因もあるようですが)、メーカーとユーザーの距離感も近い物となっていました。
興味深いのはPCXのデザインはオリジナリティがあり、それが現在もなおずっと受け継がれてきたことです。
だから旧モデルに乗っていても古いように見えないですし、それでいながらも現行モデルはしっかりと新しく見える。このような点にもPCXの魅力があるのだと思います。
イージースムーズかつパワフル!エンジンの特性にも注目ですよ!!
PCX160の試乗テスト期間中、別件で他ブランドの250ccスクーターも並行して借用していたので何度かほぼ同条件で乗り比べを行ってみました。排気量が小さい分250ccスクーターと比べて非力に感じるのだろうと思っていたところ、意外にもそれほどの差は伝わってこない。むしろPCX160は車格のわりに軽量なこともあり結構パワフルに感じられるほどなのです。
スタートダッシュでのけぞるような加速感はないものの、ぐんぐんとよどみなく速度は上がっていく。快適かつ安楽です。
ちなみに排気量125ccのPCXも駆動系のセッティングが非常に良くできているのですが、排気量が大きい分、PCX160の方が余裕を感じられることは間違いありません。
高速道路、一般道、半々くらいの使用環境で、メーターディスプレイ内に表示される燃費は40km/L前後。かなり優秀です!
シーンに合わせてピッタリカンカン 自由度の高いライポジが◎
実は乗り始めた当初は、足つき性は思っていたほど良くないなあと考えていました。ただ、これは乗り重ねていくうちに、ああすごく高次元でバランスが取れているのだと、思うようになっていきました。
まずシートの前後が長く設定されており、前方に向かって内ももにあたる部分がしっかりと削ぎ落とされています。先述した足つき性の話に関しては、車両を借用し、すぐに高速道路を使ったこともあり、後ろ気味に座っていたことが挙げられます。その際にはクッション性が高く乗り心地が良く感じられたことも付け加えておきます。
一方で交通量が多くストップアンドゴーが続く都市部では、細かく左右に切り返すために、体をハンドルに近づけるために、やや前気味に座るのですが、その際には足つきは良いのです。
つまり走行シーンに合わせて、ライダーは座る位置を変えることができ、無意識的にいつも最適なライディングポジションを探ることができるというわけです。
ツーリングもこなせる深い懐!コーナリングフォースも超絶気持ちイイ!!
PCX160はとにもかくにも非常に便利です。
シート下のスペースは広いですし、静かで軽いので朝早い時間や夜遅くの出し入れも容易、タンデムをしても十分なパワーです。借用期間中は用事もないのにむやみにPCX160に乗ってコンビニに行く始末でした。
そんなPCX160を街中で使うだけではもったいないと思ったのは、なんと言っても走りの質が良いことでした。
超のつくような上等なサスペンションを使っているわけではないのに、しっかりとしたダンピング特性で路面を追従しますし、現行モデルではフロント14インチ、リア13インチのタイヤサイズとされており、そのこともあってカーブに差し掛かり、車体を倒していった時に体に掛かってくるコーナーリングフォースが非常に心地良いのです。
それはコーナーを攻めた走りをしようと思わせるようなものではなく、とにかく気持ちが良いのでこのまま曲がりくねった道が続いていって欲しいと感じさせるタイプです。
タンデムシートはフラットで荷物の積載もしやすいので、旅道具を括り付けてロングツーリングに出たいという気分にさせてくれます。
そうなってくると、高速道路が使える排気量であることも大きなメリットとなってくるのです。
※コーナリングフォース=コーナリング中の遠心力でタイヤが押し付けられた際のグリップ力のこと。
じっくりと年月を費やして進化と熟成を重ねてきました!
スクーター全般で言えることなのですが”実用性の高さ”というところが購買欲を得られるポイントとなってきます。だからPCX160もその点を注力しながら開発がなされ、進化を続けてきました。
大きくも小さくもないボディサイズ、それに見合う運動性能、ユーティリティスペースの広さ、毎日使ってもトラブルが出ないタフさや燃費の良さなどなど。はっきり言ってしまうとユーザーのわがままにすべて応える形のパッケージングとしなければならないのです。
そう考えるとキーレスエントリー、ABS&トラクションコントロール、キラキラと輝くメッキパーツなどのディテールからみてもPCX160は素晴らしい完成度であり、人気が高い理由も納得することができます。
独断と偏見で伝えたい”勝手にGood&Bad!!”
テストライダー小松男が独断と偏見で決めるグッド&バッド。
PCX160のグッドはシートです。クッション性があり長時間乗っても疲れにくい。前後に長くライディングポジションの自由度が高い。だから毎日気軽に乗れる上に、長時間走り続けるようなロングツーリングにも出たくなってしまいます。
なお付け加えておくならば、足を前に投げ出しても、しっかりと下に揃えても良い形状のステップボード、幅や位置など絶妙なハンドルバーの位置などもグッド!つまりライディングポジション全般で好印象を受けました。
対してバッドなポイントは、フロント左側のユーティリティスペースです。フタの開く角度、開口部の広さのわりに内部形状が深く、私の場合使い勝手がいまひとつだと感じました。しかし走行中に中の物が落ちないようにすることや、なるべく容量を稼ぎたいと考えると、おのずとこの形状となってしまうのでしょうね。
新車で税込み41万2500円!売れるのも納得コスパです!
ライダーが所持している免許が小型自動二輪免許であったり、どうしても維持をするうえでコストを抑えたいというのであれば125ccエンジンのPCXとなるかもしれませんが、それらの問題が無いようであれば、断然PCX160をお薦めします。
PCXの使い勝手はそのままに、いざとなれば高速道路も使える排気量であり、その分余裕のあるパワーを持ち合わせているからです。
新車価格を見てもPCXが36万3000円(税込)なのに対しPCX160は41万2500円(税込)となっており、その差4万9500円です。これを”たった”と言うか、”も”と捉えるかは人それぞれだと思いますが、一週間テストライドを行った印象では「5万円足してこの乗り味ならPCX160だ!」と感じました。
中古マーケットも見てみると、流通台数が多いにも関わらず相場はずっと高めで推移してきており、このことからリセールバリューの高さも窺い知ることができます。
PCX160は新車でも中古を手に入れても満足できる、そんな一台なのではないでしょうか!?
PCX160[2024]主要諸元
- 全長×全幅×全高:1,935×740×1,105mm
- ホイールベース:1,315mm
- シート高:764mm
- 車重:133kg
- エンジン:水冷4ストローク単気筒OHC 156cc
- 最高出力:15.8PS(12kW)/8,500rpm
- 最大トルク:15Nm/6,500rpm
- 燃料タンク容量:8.1L
- 変速機:Vマチック
- ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
- タイヤ:F=110/70-14、R=130/70-13
- 価格:41万2500円
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