
クルーザーのインプレッションでパフォーマンスやハンドリング、電子制御を詳しく語ることはあまりありませんが、それがドゥカティとなれば話は別です。ドゥカティの本格クルーザーであるX ディアベルは、エンジンをVツインからV4に刷新し、フルモデルチェンジ。XディアベルV4の国際試乗会に参加してきました。
目次
他に類を見ない超ハイパフォーマンスクルーザー
XディアベルV4のクルーザーとは思えない圧倒的なパフォーマンスの数々は、筆者(小川勤)を次々と驚かせてくれました。そしてドゥカティが生み出す本格クルーザーの繊細さと豪快さの融合は、多くのライダーを新たなる境地へと導いてくれることを確信。クルーザーだけでなく、スポーツバイクとしてもネイキッドとしても使え、ツーリングで他のドゥカティに遅れをとる心配もありません。ブレーキのタッチ、サスペンションの動き、V4エンジンが生み出す強烈な速さとトラクションの良さは、まさにドゥカティそのものなのです。
ディアベルは2011年に登場したドゥカティのスポーツクルーザー。そのディアベルをベースにさらにロー&ロングを追求し、ステップをフォワード仕様にしたXディアベルが登場したのは2016年。当時はどちらもVツインエンジンを搭載していました。
そして、ディアベルは2023年にV4エンジンを搭載したディアベルV4に、Xディアベルは2025年にXディアベルV4にモデルチェンジされたのです。Xディアベルは、ディアベルにはないシックな雰囲気とラグジュアリーさが寄与され、アメリカ製クルーザーとは一線を画した存在となっています。
XディアベルV4のキャラクターを決定づけているのは、車名にもなっているV4エンジンです。このエンジンはMotoGPマシンが由来で、スーパーバイクを戦うパニガーレV4シリーズに搭載される超ハイスペック仕様がベース。XディアベルV4にはそこからボアを2mm拡大し、排気量を1158ccに拡大したグランツーリスモエンジンが搭載されています。
中速を強化した味付けですが、逆回転クランクや爆発間隔はパニガーレV4同様で、スペックは168hp/10750rpm、12.8kgm/7500rpmを発揮。スーパーバイク譲りのハイコストエンジンをクルーザーに搭載するメーカーは、ドゥカティ以外にありません。

XディアベルV4はパフォーマンスだけでなく、ラグジュアリーさもスポーツ性も大幅に向上させています。333万5000円。

ブラック・ラヴァ。光の加減で表情を変えるペイントはとても凝っています。

バーニング・レッド。ディアベルといえば、この極太タイヤ。

1158ccのグランツーリスモエンジンを搭載。エンジン単体もかつてのVツインより軽量に仕上がっています。またアイドリング時は後ろバンクを停止させ、発熱を軽減。
ロングホイールベースと極太タイヤを感じさせない軽快さ
XディアベルV4のスタイリングは、アッパープレミアムを打ち出すドゥカティらしセンスと個性に溢れています。車体は大柄ですが、取り回しなどでストレスを感じるほどの重さはありません。
跨ると足を前に投げ出すスタイルはクルーザーそのもの。ハンドルはとても自然な位置にありますが、身長165cmの僕にはステップが前すぎる印象です。小柄なライダーはオプションのミッドコントロールステップを装着するのが良いでしょう。
スマートキーをジャケットにしまい、電源ボタンを押すと視認性の高いカラーTFTメーターが迎えてくれます。エンジンを始動するとV4サウンドが轟き、パニガーレV4と変わらない鼓動が身体に伝わってきます。「ウエット」「アーバン」「ツーリング」「スポーツ」のライディングモードからまずは「ツーリング」をセレクト。
走り出した瞬間に驚くのは軽快さです。XディアベルV4は、ディアベルV4よりも27mm長いホイールベースが与えられていますが、その長さを感じるシーンはほとんどありません。車体は大柄ですが、欧州の小さな路地をタイトにクリアし、軽々と操ることができるのです。リヤタイヤは240サイズの極太ですが、それを感じさせないほどライダーの操作に対する反応が良く、この動きを知るとワインディングが俄然楽しみになってきます。

筆者(小川勤)がXディアベルV4に跨ったポジション。上半身は楽ですが、足が伸び切ってしまいます。身長165cm、体重68kg。

身長165cm、体重68kgの筆者(小川勤)がシート高770mmのXディアベルV4に跨った足つき。少し踵が浮きますが、229kgというクルーザーとしては軽い重量が安心感に貢献しています。

こちらはオプションのミッドステップ。いわゆる普通のネイキッド的なポジションを約束。小柄なライダーはこちらを装着すると良いでしょう。
クルーザーでも運動性の高さを追求するドゥカティ
ワインディングまでの往路で少しだけ高速道路を走ることができました。少し気になったのは4000rpm以下のギクシャク感。6速で100km/h巡行をすると4000rpm以下になってしまい、思った通りに加速することができないのです。100km/h巡行は5速の方が良いかもしれません。しかし、エンジン回転を少し引っ張った時の高揚感はV4エンジンならでは。官能的かつ強烈な加速を約束してくれます。
ワインディングでは想像以上の運動性を披露。モードを「スポーツ」にするとエンジンのレスポンスがグッと向上します。
クイックシフトは精度が高く、発進と停止時、Uターン以外でクラッチレバー操作の必要はありません。旋回中でもショックなくギヤチェンジでき、常にリヤタイヤに駆動がかかっている感覚があるため安心できるのです。
ブレーキのタッチやサスペンションの反応の良さはスポーツバイク並み。だからバイクをコントロールしている実感が得やすく、走るほどにペースが上がってしまうのです。気持ちを落ち着けるためにモードは「ツーリング」に。「スポーツ」は、僕には過激すぎるようです。

ライディングモードは「ウエット」「アーバン」「ツーリング」「スポーツ」の4種。トラクションコントロールやコーナリングABSはもちろん、クルーズコントロールも標準装備。クルーザーにも関わらずウィリーコントロールやローンチコントロールも搭載。制御をオフにしてスロットルを全開にすると、前輪の接地感は簡単になくなります。

モードによって様々な制御の介入度合いが変化します。

大きな車体、極太リヤタイヤを感じさせない軽快な走り。ドゥカティらしい走りの楽しさの追求は、他のモデルと同様です。

スポーツモデルと変わらない足まわりの装備も魅力的です。

スイングアームは片持ち。駆動方式は、Xディアベルはベルトでしたが、XディアベルV4はチェーンに。
モード変更で自分に合ったバイクを作り出す
XディアベルV4は、前モデルのXディアベルよりもシート高が35mm上がり、これが軽快なハンドリングに貢献。ロー&ロングな印象は薄れていますが、いわゆるスポーツネイキッド的な走りを見せてくれます。
直立状態からブレーキングをして向きを変えるシーンでも軽快感が強く、深いバンク中も前後タイヤは高いグリップを確保。立ち上がりでは、極太リヤタイヤのパフォーマンスを活かしながら、スロットルを大きく開けて立ち上がっていけるのです。かなりのアベレージで走ってみましたが、車体はどこも擦ることなく(たまに踵は擦りましたが…)バンク角も十分あります。
後半、先導のペースはどんどん上がり、常用するギヤは4速や5速に。スロットルは度々全開になります……。それでもサスペンションやブレーキ、電子制御はどこまでも応えてくれ、その振る舞いはスポーツバイクと変わりません。
試乗後半は、土砂降りになったのでモードを「レイン」に。パワー特性が穏やかになり、トラクションコントロールも頻繁に介入。ライダーを確実にサポートしてくれます。
Xディアベルの『X』には様々な物事を交錯させるという意味があります。2016年の登場以来、ファッションやトレンド、そして最先端の技術やアイテムなど、その時代のニーズを交錯させて進化してきたことを、XディアベルV4の試乗を通して実感することができました。
これまでクルーザーを自分のバイクライフに反映させてこなかったスポーツ派のライダーは多いでしょう。ただXディアベルV4は別格。XディアベルV4と過ごす、新たなるドゥカティライフを想像してみるのも面白いかもしれません。

タイトなコーナーも高速コーナーも変わらない感性で曲がることが可能。速さと運動性において、XディアベルV4が期待を裏切ることはないでしょう。

サイレンサーエンドはV4エンジンを連想させるデザインを採用しています。

ライダー、パッセンジャーともに居住性を大幅に向上させたシート。

気品のあるラグジュアリーさの中に、驚異的な走りの魅力を秘めるXディアベルV4。
XディアベルV4の基本スペック
XディアベルV4主要諸元
・ホイールベース:1,620mm
・シート高:770mm
・車重:229kg
・エンジン:水冷4ストローク90°V型4気筒DOHC 1,158cc
・最高出力:168PS(124kW)/10,750rpm
・最大トルク:126Nm/7,500rpm
・燃料タンク容量:20L
・変速機:常時噛合式6段リターン
・ブレーキ:F=ダブルディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70ZR17、R=240/45ZR17
・価格:333万5000円
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