初めてのバイク選び [2000年代初頭のバイク編]
2007年9月1日。この日付が何を意味するか、皆さんご存じでしょうか。

はじめに

それは 第1種原動機付自転車/軽二輪自動車(いわゆる原付バイクと250ccのバイク)において、決定的な大絶滅が起こったXデー。 生産終了(新車で買えなくなってしまった)になってしまったバイクがたくさん発生したタイミングなのです。 しかも、そのほとんどが後世に語り継がれる名車揃いなので、今なお惜しむ声が多いわけです。 この記事にたどり着いたあなたも、昨今の洗練されたデザイン、性能のバイクよりも、各メーカーの癖を感じるちょっと昔のバイクに魅力を感じるお一人なのではないかと思います。 ここでは、彼らが惜しまれつつも新車市場から姿を消した理由と、まだ現実的に手に入れる事が可能な車両、そして彼らと付き合う上での心得をご紹介したいと思います。

みんなどうしていなくなった?

さて、このタイミングで新車市場から姿を消したバイクには一貫した特徴があります。 それは、エンジンにガソリンを供給する仕組みをコンピューターの制御に頼らない、いわゆる”キャブレター車”である事です。
キャブ インジェクター
今では、気温や気圧に合わせ、コンピューターが燃料供給を制御しているフューエルインジェクション式(FI式)が一般的ですが、当時はその制御を単純な機械が担っていました。 イメージで言えば、キャブレター式は機械が一心不乱にガソリンをエンジンへ霧吹きで投入している恰好をご想像ください。 よく言えばシンプル、悪く言えば原始的。 ただし、気温や気圧の変化に対して自動で調節ができないため、場合によっては機嫌が悪くなったりします。 しかしながら、調整の方法も単純であり、いちいち手はかかりますが容易に人間の手で調節可能という特徴がありました。 しかし、その簡易な構造故、排ガス中の有害物質の削減が困難であったため、2007年施行の法令をパスすることができず、FIを新規開発して採算が取れるとメーカーが判断したバイクだけがこのXデーを生き抜きました。 言い換えると、この燃料供給方法から脱する事が出来なかったバイクはこのタイミングで姿を消してしまったのです。 下記にてこの規制で新車市場から姿を消してしまった代表的なバイクを紹介します。

原付バイク

マグナ50

マグナ50
原付にアメリカンバイクが存在していたのをご存じですか? 心臓はモンキーやゴリラと同じカブ系のエンジンですが、原付とは思えないサイズ感・高い質感が話題を呼んだ機種でした。

ゴリラ

ゴリラ
原付マニュアルバイクの代名詞、モンキーの相棒分ともいうべきゴリラも、このタイミングで姿を消してしまった一台です。 後年、モンキーはFI化されて継続販売されましたが、ゴリラのラインナップ復活は叶いませんでした。

RZ50

RZ50
いまや旧車の代名詞ともいうべき2ストバイクも、50ccであれば2007年まで新車で買うことができました。 そんなバイクも今や新車時の倍以上の値段。もし手の届く範囲で良い感じの個体に巡り合えたら、2ストバイクを保有できるラストチャンスかもしれません。

250ccバイク

VTR250

VTR250
長い歴史のあるホンダ・VTの名前と特徴的なV型2気筒エンジンも、この年代を境に一旦姿を消してしまいます。 数年後、VTR250はFI車として復活するのですが、そこに同時期に販売されていた同じエンジンを搭載するアメリカンバイク、V-twin Magnaの姿はありませんでした。

スーパーシェルパ

スーパーシェルパ
近年、その扱いやすい特性で価値が見直され価格が高騰しているスーパーシェルパも、このタイミングで姿を消した一台です。 もともと水冷だったエンジンを空冷化し、出力特性を穏やかにしたモデルで、カワサキ車の中でもトップクラスの乗りやすさと懐の広さを誇ります。

BALIUSⅡ

BARIUSⅡ
言わずと知れた250CC4気筒バイクです。 通常の乗用車の二倍以上の回転域までエンジンが回っていく官能性がウリのこのベストセラーも、この時期に惜しまれつつも生産を終了したバイクの一つです。 日本のバイクメーカーが誇る250cc四気筒バイク達はこの時期に軒並み生産終了になっています。

この年代のバイクに乗るメリットって?

さて、改めてこの年代のバイクを選ぶメリットと注意点を、現行機種のそれと対比して触れていきます。 最近のバイクは、言うならば車体に小さなコンピューターが乗っているような仕上がりになっています。 そのため、何か故障した際に小さな部品を交換して復帰させるというよりは、不調を来しているユニットをごっそり交換して対応することが少なくありません。 中には、エンジンの制御だけではなく、ブレーキ、サスペンションの制御までにコンピューターが介入している車両もあります。 文字通りコンピューターの所業なので、町の小さなバイク屋さんには、そのブラックボックスの中で何が起きているのかを知る術すらないため、上記のような交換方法になるのです。 お察しの通り、箇所によっては大きく部品代・工賃のかかる大がかりな整備となる事もしばしばあります。
インジェクター 電子制御指す
一方、この規制以前のキャブレター式バイクは、仮にエンジンの様子がおかしくなっても、キャブレター起因であれば小さなねじ、パッキン単位で部品が出てくる為、それを交換するだけで治る事が多くあります。 また、この時代は電子制御が一般的でなかったこともあり、全般的な構造もシンプルな車両が多く、町のバイク屋さんでも十分に整備してもらえるケースがあります(数十円の部品を交換するために数千円の工賃が発生……等はあり得るのですが)。
リペアキット
また、2007年近辺のバイクはいわゆる「旧車」とはちがってまだまだ保守部品が出てくるものが多いのも特徴です。 一部外装部品等、在庫の回転がはやい部品は欠品が始まっていますが、機関部品は共用する車種が多数あったことから、まだしばらくは乗ってあげられる供給状況が確保されています。

まとめ

朝、何だかよくわからないけれど、エンジンがかかりにくい。そんな経験は昨今のバイク乗りにとっては過去のものになりつつあります。 今回の記事で取り上げたバイク達は、たとえ絶好調の車体であっても、気候によっては一発始動と相成らない事がある車両達です。 しかしながら、これらのバイク達はそれぞれ色濃く各メーカーの設計思想を体現している事や、ボタン一つでいつも絶好調とはいかない事が、かえって"生き物"感を醸し出すバイク達になっています。 ただの乗りモノに留まらない愛着を呼び起こす車両が多く、これから始まるバイクライフに対して、絵に描いたような相棒を欲している貴方であれば、この年代のバイクはきっと素晴らしい世界を見せてくれるでしょう。 筆者も所有していたバイクはこの時期のバイクが多く、そのシンプルな構造でバイクいじりのイロハを学んだ一人でもあります。最新鋭のバイクに手を出しても、何故かここへ帰ってくる、そんな不思議な魅力のある年代のバイクに貴方も跨がってみませんか! ウェビックバイク選びでバイクを探す この他のモトガイドを読む

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