イギリスの名門であるトライアンフのラインナップは、近年ビッグバイクが中心でしたが、2024年モデルから400ccカテゴリーに本格参入。スピード400とスクランブラー400Xを登場させ、日本でもさっそく人気に。ここではスポーツテイストの強いスピード400を紹介しましょう!
目次
「いつかはトライアンフに乗りたい!」その夢を普通二輪免許で叶える!
「もちろん日本の免許区分が400ccまでであることは知っているよ」これは、トライアンフのチーフ・プロダクト・オフィサーであるスティーブ・サージェントさんの言葉です。その狙い通り、トライアンフのスピード400とスクランブラー400Xは、今シーズン国内導入とともに大人気に。『いつかはトライアンフに乗りたい!』という多くのライダーの夢を叶えたのです。
その人気の理由は、ビッグバイクのモダンクラシックシリーズと同じクオリティを持つ車体の完成度とディテールの質感の高さでしょう。さらにクラシックなスタイルに宿るスポーツ性の高さも魅力です。この2つの吸引力が多くのライダーをトライアンフに目覚めさせたのです。
トライアンフは「新規カスタマーを獲得する」という目標を掲げ、5年の歳月をかけて400ccの2台を開発。そして、2020年にインドのバジャージとグローバルパートナーシップを結び、生産の基盤を確保したのです。デザインや開発、テストなどはイギリスで行い、2023年6月にニューモデルとして発表。発表直後に世界中から注文が殺到し、生産体制を強化。2024年初頭より各国でリリースが始まっています。
「ベストバランス400cc!」と言いたくなる、圧倒的完成度
「400ccのトライアンフってどうなのだろう?」発売されるまでは、誰もがその完成度や走りの実力に良い意味でも悪い意味でも注目していたと思います。僕自身も内心は「大丈夫なの?」と思っていた一人です。しかし、それは杞憂でした。それどころか、実際に走り出すと驚くほどのパフォーマンスを披露。国際試乗会でその実力に触れ、日本でも何度も試乗しましたが、「今、ベストな400ccは?」と聞かれたら、スピード400とスクランブラー400Xが最初に頭に思い浮かぶバイクと言えるでしょう。
スピード400は、前後タイヤを17インチとしたスポーツテイストを強めたモデル。スクランブラー400Xとはフレームも作り分けた本格派です。スピード900&1200の意匠とコンセプトを受け継ぎ、ディテールの仕上げも負けていません。
エンジンは新開発されたTR(トロフィーの意味)シリーズと命名された、排気量398.15ccの単気筒で、40psを発揮。ホンダGB350シリーズは20ps、BMWのG310シリーズは34psなので、かなりハイスペックであることがわかります。それぞれ排気量やバイクのコンセプトは異なるとはいえ、普通二輪免許で乗れる単気筒エンジンで考えるとこの数字のインパクトはかなり大きいのです。ちなみにハスクバーナの401やKTMの390シリーズは40psを発揮しますが、こちらは低速域がシビアな超高回転型エンジンです。
跨ると、スピード400はとてもコンパクト。171kgの車重、790mmシート高は、跨った瞬間に身体にフィットし、安心感で包んでくれます。
英国ブランドらしいファッション性と、驚くほど高いスポーツ性の融合
見た目はクラシカル、でも走りはスポーティ。オシャレにもスポーツにも使えるのがスピード400です。どんな風景にもスッと馴染むスタイリッシュさは英国ブランドならでは。市街地では低中速を繋ぎながら走り、3,000〜4,000rpm辺りを常用するととても滑らかです。もちろん8,000rpmまで引っ張り、40psのパワー感と驚くほどのレスポンスを楽しむことも可能ですが、その必要性を感じることはありませんでした。
サスペンションはソフト。エンジンに豊かなトルクが宿るため、スロットルワークで車体姿勢を作れ、乗り心地もとても良いのです。軽快かつ痛快な乗り味は、市街地でもワクワクさせてくれ、スロットルを開けるのが楽しくなります。
峠では本格的なスポーツ性を教えてくれます。この感覚、国産のこのクラスのバイクではなかなか味わえません。決定的な違いはサスペンションの設定です。トライアンフには日本メーカーが作りがちな初心者専用の柔らかい部分がなく、ライダーの操作がタイムラグなくバイクに伝わります。軽快感やスロットルを開けた際のグリップ感が思い通りに手に入るため、スポーツライディングの醍醐味も味わいやすいのです。
欧州の試乗会はペースが速く、度々スロットルは全開になります。そんな時もスピード400は余裕で応えてくれます。バイクとライダーの一体感も高く、低くてコンパクトな車体はあっというまに向きを変え、立ち上がりの体制へと導いてくれます。サスペンションも良い感じで踏ん張り、その振る舞いは「ここまで行けるのか」と感動するほどでした。
ナラシを終えるとガラリと印象が変わります
「スピード400とスクランブラー400Xを発表すると、狙った通り、新しいカスタマーや若年層から大きな声が上がりました。しかし、先進国からは重たくて大きいバイクに悩むベテランの声も同様に大きかったのです」とスティーブさん。この実力ならビッグバイクに疲れたベテランにも高い満足度を提供してくれるはずでしょう。
スピード400は「新設計の単気筒エンジンはこんなに走るのか!」という驚きと同時に、速さと気持ちよさを教えてくれます。気になる方には、ぜひトライアンフディーラーで試乗をオススメします。
ただ、スピード400(スクランブラー400Xも)はナラシが重要になってきます。ほぼ新車状態の車両に何台か乗ったのですが、ブレーキ、サスペンション、さらにエンジンのあたりがついていなく、その状態だと気持ちよさは半減します。僕の印象だと、あたりがつくのに1,000kmくらいを要します。ナラシを終え初回点検を終えると、高回転域のエンジンの振動が消え、サスペンションがよく動き、ブレーキのタッチも激変するのです。基本的にネガティブな印象のないトライアンフの400ccシリーズですが、それはナラシを終えたことが必須の条件になります。
スピード400は、車名の通りスピードを求めるのも良いでしょう。きっとスポーツライディングの楽しさを存分に味わうことができます。一方でスピードを抑えて走ってもきちんと奥深い走りの魅力を持っているのがスピード400なのです。良いバイクは、ライダーのキャリアやシチュエーションを問わず、色々な楽しさを提供してくれます。このパッケージを知ると、今後のバリエーション展開も楽しみになってしまいますね。
TRIUMPH SPEED400[2024]主要諸元
- 全幅×全高(ミラー含まず):814×1084mm
- ホイールベース:1377mm
- シート高:790mm
- 車重:170kg
- エンジン:水冷4ストローク単気筒DOHC 4バルブ
- 排気量:398.15cc
- 最高出力:40PS(29.4kW)/8000rpm
- 最大トルク:37.5Nm/6500rpm
- 燃料タンク容量:13L
- 変速機:常時嚙合式6速リターン
- ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
- タイヤ:F=110/70 R17、R=150/60 R17
- 価格:72万9000円
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