ヤマハが提供するフルカウルスポーツバイク群を指すYZFシリーズ。
フラッグシップモデルとなるYZF-R1/R1Mから最小排気量のYZF-R125まで6種類の排気量に分けてラインアップされているのですが、その中核的存在となっているのが250㏄エンジンを搭載するYZF-R25です。
最高峰ロードレースであるMotoGPで活躍するYZR-M1の直系と言えるモデルであり、日本だけにとどまらず世界的に大人気の一台!
このクラスのライバルは国内ブランドを中心に強敵ばかりなのですが、その中でもYZF-R25は別格と言えるほど多大な支持を受けています。
でもなぜそれほどモテモテなのでしょうか。疑問に思ったら実際に見て触れて乗ってみるのが一番。今回はYZF-R25の試乗テストを行い、人気の真相を探っていきたいと思います。
目次
レースでの活躍が人気に影響する?でもそもそもこのクラスって・・・
初代YZF-R25(以下・R25)が登場したのは今から10年前となる2014年のこと。当時は今もなお世界中のライダーに愛され続けているMotoGP界のレジェンドであるバレンティーノ・ロッシがヤマハワークスチームのライダーだったこともあり、ヤマハYZFシリーズの250ccモデルとして大変注目されたものです。
そもそも80~90年代にかけてのレーサーレプリカブームが終わり、2ストロークモデルの生産が中止され、2000年代初頭はビッグスクーターやストリート系バイクの波が押し寄せていたこともあり、普通免許クラスで乗れるフルカウルスポーツモデルマーケットは瀕死状態だったのですが、カワサキからニンジャ250が登場しすぐさま大ヒット。その後もいくつかの250ccフルカウルスポーツモデルが発売されておりR25は後発という形となったのですが、その分ライバルモデルよりも魅力が凝縮された一台に仕上がっていたことを覚えています。
フルカウルスポーツモデルというのは元来レース界での活躍がマーケットでの人気に反映されてきました。ただライバルモデルたちは時流に合わせてレーサーレプリカ的なものではなく、独自の解釈でフルカウルスポーツモデルを開発していたのですがR25は違いました。
YZR-M1やYZF-R1などレースの最前線で活躍するワークスマシンのDNAを色濃く反映したモデルであり、むしろ硬派さが際立つ一台に仕立てられたのです。
カッコ良くて刺激的!!R25の方向性が”イマ”を作った!!
今回R25の紹介をするにあたり久しぶりに実車に触れたのですが、まず跨った瞬間にステップ位置が高くスポーティーなライディングポジションだということが伝わり、思わず”おっ”と声が漏れてしまいました。私事で恐縮なのですが今から30年以上前に免許を取得し始めて買ったTZR125で日々峠道を攻める高校時代を送った身としては、やはりスポーツバイクはこうでなくてはと感じてしまうのです。
それと肉抜き加工されたトップブリッジや5,000回転以下の目盛間隔が狭いタコメーターなど、ディテールからして”走り”を匂わせてくれるポイントが散りばめられているところも高得点をつけてあげたくなってしまいます。
走らせてみるとスポーティーなキャラクターでありながら扱いやすさもしっかりと考えられていることが分かりました。例えばライディングポジションは最初こそ多少きつめに思えたのですが、長時間乗っていても疲れにくいですし、なんと言ってもコーナーリング時の入力がしやすくちょっとバンクさせるだけで意のままの走行ラインをトレースすることができます。
低回転域でもトルクがありストップアンドゴーが続くシーンでもストレスが無いですし、8,000回転あたりからレーシーなサウンドに変化し、おのずとやる気スイッチがオンになってしまいます。
ちょっと走るだけでもスポーツライディングの楽しさを得られる。これはR25の大きな魅力となっているのです。
人気の高さのヒミツは実際には乗るとさらに分かります!
ライディングポジションはややタイトなのですが、むしろそれが多くの体格にマッチしているとも思えます。780mmというシート高はクルーザーモデルと比べれば当たり前のように高いですが、この手のスポーツモデルにしては一般的ですし、軽量かつスリムな車体なので取り回しはしやすく、女性ライダーやビギナーでも気軽に扱うことができるでしょう。
それでありながらも身長177cm、体重70kgのやや大柄の私が乗ってもバイクが小さく見えないというのは大きな魅力なのです。
フルサイズ的な車格なので見劣りせず、ビッグバイクのような重さが無く、跨るとコンパクト、これらの全体的なバランスにより、毎日乗っても飽きず、疲れないというキャラクターになっているのです。
気持ちよく吹け上がるエンジン!!手足感覚のハンドリング!!
最近ヤマハのバイクの試乗テストをする機会が多いのですが、どれも非常にハンドリングが良いのです。それこそ昔は”ハンドリングのヤマハ”などと言われていたものなのですが、個人的には一時期私の乗り方に合わない時代があり、今ここにきてまた素晴らしいハンドリングが戻ってきたという感覚なのですが、詳しく語るとなると七面倒くさい話になってしまうので簡単に説明すると、フロントタイヤの舵角(バンク)が始まるタイミングが絶妙なのです。
「ん? どゆこと?」
それが正しい反応です。
バイクはハンドルを左右に振るだけでなく車体を寝かすことでコーナーリングフォースが発生する乗り物です。フロントフォークのセット位置によるキャスター角やトレール量、ホイールベースやスイングアーム長など、色々な設定によってライダーが行う入力による反応、つまりコーナーリングが得られるわけですが、リアタイヤがバンクして、それに追従してフロントタイヤが切れ込むという設定が基本です。
昨今電子制御関係の技術力向上により、レースの世界では様々なライディングの仕方に対応するようになってきたこともあり、それによって個々のライダーの乗り方によっては簡単に乗れるバイクと難しく思えるバイクの差が広がったように思えているのですが、R25ではスキルに左右されることなく気持ちの良いハンドリングが決まるような設定になっているのです。それを私的にフロントタイヤの舵角がはじまるタイミングが絶妙と解釈しました。
あと並列2気筒エンジンの成熟度も外せません。絶対的なパワーは持ち合わせていませんが、全回転域をしっかり使って走ることを楽しめるのです。低回転域からしっかりと粘りがあり、高回転域の吹け上がり方も最高。だから気持ちよく走らせていながら、ふとメーターを見ると”ヤバいヤバい”と思わせる速度域に入っていることもままありました。
スポーツバイクに快適性はいらない。若干やせ我慢するくらいが良いのです!
以前私が乗っていたスポーツカーのサイドシートに知人を乗せた際に「このクルマはドリンクホルダーが無いのか」と言ってきたことがありました。私は「サーキット走行をしながらドリンクに手を伸ばしているシーンを見たことがありますか?」と返しました。ミニバンやSUVではなくスポーツカーですよ。
バイクの場合もそれは同じでスーパーバイク直系のDNAを受け継ぐR25に快適装備は必要ないと個人的には思っています。でも多様性が求められる今の時代においては、なかなかそれは難しいものでスマートフォンホルダーなどをつけるオーナーも多いと思いますが、出来れば多少やせ我慢をしてでもスポーツバイクの硬派さに徹して乗るとカッコいいと思います!!
本当にひと昔のスポーツバイクよりも乗りやすく、しかも気持ちよく走ることができるので、その点を存分に味わってもらえると、その先には”レーシングスーツやレーシングブーツを揃えてみよう”とか”サーキットに持ち込んで走らせてみよう”といった世界も広がりをみせます!!・・・というのはオジサンの垂直思考で、実際のところはリアキャリアをつけてロングツーリング仕様にしても良いですし、ドレスアップをしてファッション感覚で付き合っても良く、R25は基本的なスポーツライディングパフォーマンスをしっかりと備えた懐の深いモデルとなっているのです。
独断と偏見で伝えたい”勝手にGood&Bad!!”
テストライダー小松男が独断と偏見で決めるグッド&バッド。
何といってもYZFシリーズの血統をしっかりと表す「M字」ダクトが設けられたレーシーなフロントマスクが最高にグッド!
形状も秀逸であり高速走行時には大いに恩恵を受けます。他のライバルと比べてみてもやや大人っぽい印象を持つデザインとなっており、これなら年齢性別問わず幅広い層とマッチングが良いと思います。
バッドポイントはとても悩んだ末、容量がもう少し大きければ給油回数を抑えられると思い燃料タンクの写真を撮りました。しかし同排気量のライバルモデルとスペックシートを比べてみたところ、燃料タンク容量は皆同じ数値となっているのです。なので、これは他のフルカウルスポーツでも同様に感じる点なのかもしれません。
兄弟の多い大家族シリーズ。どれにしようか悩んだらコレ!!
ちょっと前まではネオクラシックモデルがブームの先端にいると感じるほどレトロスタイルでシンプルなバイクがストリートに溢れかえっていたのですが、本当にここ数週間のことですが、急にそこらじゅうでフルカウルスポーツモデルを見かけるようになったと思っています。
まあそもそも流行というものは行ったり来たりを繰り返しているのですが、今現在はフルカウルスポーツモデルが頭一つ飛び出したか!?という感じがしています。
そのような中でR25は万人にお薦めできるフルカウルスポーツモデルとなっています。高速道路を使うこともできますし、タンデム走行も過不足無く楽しめます。排気量、パフォーマンス、車格、維持費など全体的なバランスが良いのはやはりニーゴークラスの特権です。
もっとランニングコストを抑えたいと言うのであればR125がありますし、2年に一度の車検があってももう少しパワーが欲しい、でも普通自動二輪免許しか持っていないとなればR3が用意されています。R7やフラッグシップのR1にステップアップするのも良いでしょう。
諸々の事情をトータルで考えた際に『YZF-R25』はとても具合の良い一台となっているのです。
現行型は登場してから5年が経過しており熟成の域に達しています。そろそろフルモデルチェンジか?と噂されていますが、成熟した現行モデルはとても良い仕上がりとなっていますよ!
YZF-R25[2024]主要諸元
- 全長×全幅×全高:2,090×730×1,140mm
- ホイールベース:1,380mm
- シート高:780mm
- 車重:169kg
- エンジン:水冷4ストローク並列2気筒DOHC 249cc
- 最高出力:35PS(26kW)/12,000rpm
- 最大トルク:23Nm/10,000rpm
- 燃料タンク容量:14L
- 変速機:常時嚙合式6速リターン
- ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
- タイヤ:F=110/70-17、R=140/70-17
- 価格:69万800円
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