電動バイクの現状を分析!「今が買い?」「まだ早い?」「使い勝手は大丈夫?」

【文:沼尾 宏明】

電動バイクのラインナップが少しずつ増えています。
ホンダの電動スクーターに続き、カワサキが電動バイクを国内販売することになりました。さらにハイブリッドバイクも登場予定です。 ガソリン代が高騰している今、「ガソリンエンジンのバイクを買うより電動バイクの方がオトクでは?」と考えている人もいることでしょう。
電動バイクはいつ買うべきなのか、巡航距離などの使い勝手はどうなのか、ベテランライダーが考察してみました!

本格的な電動バイクがいよいよカワサキからデビュー!

クルマの電動化が進む中、バイクにもその波が訪れようとしています。これまで日本で個人向けの電動バイクとしてはヤマハのE-ビーノしかありませんでしたが、2023年8月、ホンダ初の個人向け電動スクーター「EM1 e:」(29万9200円 50cc相当)が登場。ホンダは2025年までに原付二種(51~125cc)相当のスクーターを含めた電動バイクを10車種以上投入する計画です。

さらにカワサキは125cc相当の電動モーターサイクル、Ninja e-1とZ-e1を海外で発売開始。スクーターではないスポーツモデルは珍しく、今後、国内導入すると発表しました。またカワサキはガソリンエンジンにモーターを搭載したハイブリッドバイク、Ninja7ハイブリッドも市販予定です。

カワサキが市販するNinja e-1。既存のNinja250と同様のフルカウルに身を包んだ電動バイクです。
■車重140kg 定格出力5.0kW/2800rpm 最高出力12ps/2600~4000rpm 最大トルク4.1kg-m/0~1600rpm


こちらはネイキッドのZ-e1。Ninja e-1と同様の基本構成を持ちながら、より軽快なスタイルです。ともにバッテリーは取り外し可能。右側スイッチのe-ブーストを押すと15秒だけNinja e-1は+11km/h、Z e-1は+10~14km/h最高速がアップします!


451cc並列2気筒とモーターを組み合わせたNinja7ハイブリッド。電気モーターのみでも走行できる「ストロングハイブリッド」は世界初です。燃費は公称25km/L。
■車重227kg 最高出力59.1ps/10500rpm 最高出力(HV)69.5ps/10500rpm 最大トルク6.15kg-m/2800rpm


Ninja7ハイブリッドは、451cc並列2気筒エンジンと駆動用モーター、バッテリーを融合。電気だけでの走行も可能ですが、モーターはあくまでエンジンの補助的な役割です。

関係者によると「FUN要素を重視したバイク」とのことで、エンジンに電動アシストのパワーが加わり、瞬時のダッシュ力は1000ccスーパースポーツ並み。その一方で燃費は250ccクラス並みとのこと。走りはリッター級ながら大型クラスより確実にガソリン代を抑えられそうです。

――このように想像しやすいハイブリッドに対し、未知数なのは完全に電動で走るバイクの方です。ガソリンを給油しなくてOKだけど「オトクなのか」「どんな使い勝手なのか」「いつが買い時なのか」と疑問が湧いてきます。

まず買い時に関して。「多少不便だったり、コストがかかったりしても上等! とにかく新しい経験をしたい!」、そんな人は今すぐ購入しちゃいましょう。

一方、使い勝手を優先したいユーザーの場合、電動バイクが一般的になる将来まで待った方が無難……と個人的には考えます。

まだまだ航続距離が短く、充電できる設備が少ない

まずどの辺が「不便」かと言いますと、一充電での航続距離が短く、充電設備が少ないこと。Ninja e-1やZ-e1の航続距離は72km、ホンダの個人向け電動スクーター、EM1e:(原付一種相当)は52kmです。

ガソリンエンジンの125ccや50ccならガソリン満タンで200km程度走れるモデルがザラにあります。その一方でバッテリーの積載や容量に限りのある電動バイクは航続距離が伸ばしにくいのです。

電動バイクでちょっと長めに走るなら出先での充電が必要なのに、現在のガソリンスタンドみたいに充電できる設備があまり見当たりません。また充電するのに時間がかかります。Ninja e-1とZ-e1 の充電時間はバッテリー1個につき3.7時間、20%→85%で1.6時間とされています。

なおクルマの場合、急速充電に対応した車両もありますが、バイクの場合は対応していないモデルが大半です。

こうした充電時間の問題を解決するために、国内4メーカーらはバッテリーの交換ステーションを普及させるべく活動しています。これはバッテリーを共有し、出先で充電切れのバッテリーと充電済みバッテリーを交換することでタイムロスを解消するというものです。

家庭でも充電は可能ですが、その際は電動バイクのバッテリーが着脱式か固定式(取り外し不可)かが重要。マンションなどの駐車場に充電設備があれば固定式でも問題ないですが、そうしたケースはまだ少ないはずです。駐車場で充電できない場合は着脱式バッテリーで、家の中で充電できるタイプでなければ非常に不便です。

ガチャコで使用される共有バッテリーの充電ステーション。これが普及すれば、某TV番組のように充電させてくれませんか? と頼まなくて済みます。

電動バイクの乗り味とは? 発進時からパワーMAXにできる


電動バイクの走りはどんなものなのか、気になっている人も多いと思います。スタートからの加速性能がズバ抜けているのが特徴です。

パワーやトルクを発生させるために回転を上げる必要のあるガソリンエンジンに対し、電動モーターはゼロ発進から即トルクを最大に発揮できる特性があります。筆者も何台か乗ったことがありますが、非常にパワフルな印象ですね。

カワサキのNinja e-1やZ-e1、さらにNinja7ハイブリッドは、エコを考慮しつつ、ライディングでの加速感や興奮が重視されているようです。

またエンジンに比べて静かなのも、人によってはプラス要素。早朝や深夜の住宅街で騒音が迷惑にならなかったり、山中でも静かなまま駆け抜けられたりするのはいいですよね。

走りや静粛性といった要素に価値を見い出せるライダーにも電動バイクはオススメできるでしょう。

重要な維持費は安い、だけど車両価格込みで考えたい


さて肝心のコストです。近頃はガソリン価格が高騰していますが、電気で走る電動バイクならランニングコストを抑えられ、車両価格の元を取れるのでは? と考えてしまいます。

結論から言えば、本体価格はまだまだガソリンエンジンのバイクより高く、国や都道府県の「助成制度」次第と言えそうです。

Ninja e-1やZ-e1の国内価格は不明ですが、北米、ドイツ、イギリスでの価格は次のとおり。

北米
Ninja e-1:7599ドル(約113万7000円)
Z e-1:7299ドル(約109万2000円)

英国
Ninja e-1:8299ポンド(約151万7000円)
Z e-1:7799ポンド(約142万6000円)

ドイツ
Ninja e-1:8635ユーロ(約136万4000円)
Z e-1:8235ユーロ(約130万1000円)

この2台の価格に近いのはZ650。現地ではZ e-1より20万円ほど高い価格で販売されている。日本でZ650は101万2000円で販売されており、これらを参考に価格を予想してみると、80万~110万円の範囲に収まるかも?

どうでしょう、125ccのバイクで100万円を突破してしまいます。まだわかりませんが、125ccのガソリンエンジンバイクがおよそ40万~50万円台なので、2倍も高い計算です。

ただし現状の日本では助成制度を利用すれば、大幅に出費を抑えることが可能。特に東京都は補助が手厚いことで有名です。

経産省管轄のCEV補助金は、原付一種で上限6万円、原付二種で上限12万円(いずれも令和5年度の場合)と定められており、125cc相当のニンジャe-1とZ e-1は原付二種クラスに相当するため、最大12万円の補助金が得られそう。

加えて自治体からの補助金も受けられます。東京都の場合、「EVバイクとガソリン車の価格差から国の補助金を除いた額を補助(原付二種は上限48万円/三輪を除く原付一種は上限18万円)」されます。

車両価格が仮に110万円以上だったとして、最大60万円もの補助金が受けられ、ガソリン車並みの価格で手に入る可能性があります

東京都による原付一種EV(電動)バイクの補助額イメージ。同等のガソリン車の価格(図では48万8000円)との差額を補助してくれるのです。


コストを考える際、やはり車両価格は大きいです。ガソリン代が高騰しているとはいえ、車両価格が抑えられないと元を取るのに相当な年月がかかってしまいます。

逆に言えば、助成などで車両価格が抑えられ、エンジン車と同等になれば維持費は断然オトクになるでしょう。

ちなみにハイブリッドバイクは現在販売されていないので、助成金がいくらになるかは不明。クルマの場合は電気自動車の「上限85万円」に対し、ハイブリッドは「上限55万円」に抑えられており、バイクの場合も電動車より助成額は少なくなるでしょう。

【まとめ】個人的な本音は、まだエンジン推し!?

電動バイクは、充電設備や充電時間の問題には目をつむりながら、ライディングプレジャーなどの新しさを追求したいライダーは購入してもいいはず。助成制度を利用すれば車両価格はガソリン車並みに抑えられ、ランニングコストも安く済むでしょう。

繰り返しになりますが、ガソリン車並みの利便性が欲しい人は、航続距離がもっと伸びたり、充電設備が現在のガソリンスタンドと同様に増えるまで待った方が無難です。筆者の場合、住環境や懐具合、バイクが2台あるといった現状を考えると、電動バイクを買うのは時期尚早と考えています。

ただし、現状の手厚い助成制度がいつまで続くかは不明。普及した時は、車両価格も安くなっているかもしれませんが、助成が受けられない可能性もあるので悩ましいですね(笑)。

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