
写真:長谷川徹
昔をオマージュしたネオクラシックは各メーカーから登場していますが、ブリット350はちょっと異なる生い立ちを持っています。ブリットは90年以上も生産され続け、世界中のライダーの旅の相棒である一方で、ヒマラヤ山脈や戦場を駆け抜けてきた歴史を持っています。その最新モデルがブリット350なのです。
目次
いま、ロイヤルエンフィールドの象徴ともいえるブリットで走り出す!
ブリット350は、ロイヤルエンフィールドの現行350ccシリーズの4番目のモデルとして2024年に発売を開始し、ノスタルジックなスタイルは日本でも人気を博しています。兄弟車にクラシック350があり、スタイリング以外はシートやハンドルの差からくるポジションに違いがありますが、この2台に関しては価格帯も近いため、見た目の好みで選んで問題ないでしょう。
ブリット350の特徴は、90年以上にわたるその歴史です。ブリットは過去を振り返ったり昔をオマージュしたモデルでなく、1932年の発表以来、世界で最も長く生産され続けているバイクなのです。ロイヤルエンフィールドの長い歴史の点と点を結んできた存在とも言えるでしょう。
また、ロイヤルエンフィールドがイギリスで活躍していた1955年から、コンプリートノックダウン方式(英国から部品を輸入し、インドで組み立て)でインドでも生産を開始。それだけにインドでは親子3代でブリットを乗り続けてきた家族も少なくないというから驚きます。
僕もこれまでに3度インドを訪れましたが、最も見かけるロイヤルエンフィールドがブリットで、歴代の250、350、500ccモデルをよく見かけました。驚いたのは海抜5,000mオーバーのヒマラヤ山脈でも何台ものブリットを見たことです。
また、インドでは軍隊が採用するバイクとしても名高く、ブリットは日本では想像できない土壌で鍛えられてきたのです。最新のブリット350は、ロイヤルエンフィールドの伝統と伝説を感じることができる象徴的な存在といえるでしょう。

ブリットは1932年の発表直後には、ロイヤルエンフィールドのフラッグシップとしてレースでも活躍。インターナショナル・シックスデイズ・トライアル大会ではチャンピオンになり、マン島TTレースではラップレコードを記録しました。

クラシック350とは異なる独特の雰囲気と高級感が魅力。その佇まいは20〜30年前のカタログの中から飛び出してきたような気さえします。

他メーカーのネオクラシックやモダンクラシックと異なるのは、ロイヤルエンフィールドは90年以上もブリットを作り続けていることです。その歴史を理解した上でオーナーになればより愛着が沸くに違いありません。

身長165cm、体重68kgの筆者(小川勤)がブリット350に跨った状態。ハンドルと上半身が近く、こじんまりとしたポジションとなります。

身長165cm、体重68kgの筆者(小川勤)がシート高805mmのブリット350に跨った足つき。両足の踵が浮きますが不安はありません。
アイドリングを聞くだけで愛おしくなれる、最高の単気筒エンジン
セルを押すと空冷単気筒エンジンは簡単に目覚め、「ドッドッドッドッ」とアイドリングを始め、この時点でロングストロークであることが伝わってきます。小気味良い音は、まるでエンジンがゆっくりと呼吸しているようなイメージ。
ゆっくりとスロットルを開けると「ドルルーン」と緩やかに回転を上げます。少し勢いをつけてスロットルを開けると「ドドドン」と表情を変え、ゆっくりと回転が落ちていくフィーリングはとても好感が持てます。シングルエンジン好きならニヤリと頬を緩ませる瞬間でしょう。現代において走る前からこれほど期待が募る単気筒エンジンはとても稀有な存在です。
僕はヤマハSR400やSR500を何台も乗り継いできましたし、最新のホンダGB350を初め、様々な単気筒エンジンのバイクに乗ってきました。でも、ロイヤルエンフィールドのJプラットシリーズと呼ばれる350ccシリーズほどクラシックを感じさせるエンジンは他になく、ボア×ストロークの設定やフライホイールの重さ、さらに燃調や点火の味付けの絶妙さには乗るたびに驚かされます。

最大出力は20.2PS/6100rpm、最大トルクは27Nm/4000rpmを発揮する空冷単気筒エンジン。深いフィンを持つ昔ながらの造形も魅力的です。
「最新技術」と聞くと、どうもスペック追求のものだと思いがちです。しかし、ロイヤルエンフィールドは「最新技術」で古き良き時代のフィーリングを磨き込んでいます。
走り出してもこのエンジンは、とても穏やか。アイドリング付近からでも粘り、力強さを披露します。だから、低回転を繋いで早めにシフトアップする走りが可能になります。この感性にも自然と頬が緩みます。
多くのディーラーにこの350ccシリーズの試乗車が用意されているので、他にない「良い単気筒エンジン」の感性をまずは知っていただきたいと思います。

単気筒エンジンならではのスリムな車体。フォークカバーや灯火類の雰囲気も抜群です。

テールランプ、ウインカー、ミラー、マフラーエンドが全て丸くて、愛らしさを感じるリヤビュー。

最新のクラシック350は、灯火類がLEDに変更されましたがブリット350はハロゲンライト。好みだと思いますが、この黄色がかった光り方が旧車らしさを強調。ヘッドライト上部にあるタイガーアイもいい感じです。

メーターカバーから繋がるメッキのヘッドライトナセルを装備。

メーターカバーに埋め込まれたスピードメーター。アナログ式の安心感のあるデザイン。
ディテールを愛でつつ、その走りを謳歌したい
ハンドリングもエンジン同様にとても穏やか。癒されるというか、優しさに包まれるというか、走り出すと気分が穏やかになるのです。ブレーキのタッチやサスペンションの動きもしっとりとしていて緩やか。確かにブリット350は、速いとも軽いとも言えません。ただ、そんなことを考えるのがバカバカしくなるほどの心地良さで溢れているのです。
安定感はありますがそれを鈍重に感じることはありませんし、特筆すべき速さはありませんが力強さがあり、さらにとてつもない高揚感を味わうことさえできます。
そんなテイスティな感性を強調するようにディテールもよく作り込まれています。ブリット350のディテールの最大のトピックは、燃料タンクのハンドステッチラインです。今どき量産車でハンドステッチを使うメーカーはなかなかありません。僕は実際にインドの工場でハンドステッチの作業現場を見ましたが、その丁寧かつ素早い仕事は、ロイヤルエンフィールドがブリットを大切にしていることを物語っていました。

スロットルを開けることでバイクとの一体感が訪れ、バイクを操っている醍醐味を楽しむことができます。

ゴールドのラインは手書き。厳密にいえば一台一台異なり、独特の味わいを見せてくれます。うっすらと筆の跡が残るのがたまりませんね。
またタイヤを深くカバーする前後フェンダーはスチール製です。プラスチックパーツにはない重厚感が所有感を満たし、温もりを感じさせます。この重厚感も現代のバイクが失ってしまったディテールの一つといっていいでしょう。
昔にタイムスリップしたような気持ちでファッションも含めてノスタルジアを狙うのも楽しいし、あえて現代ファッションを投影したり、のんびり旅の相棒にもふさわしいでしょう。Z世代から、旧車好きのベテラン世代、ブリット350はこの2世代にオススメできる、数少ない新車で購入することができる1台なのです。

ロイヤルエンフィールドの新車は、全て3年保証付きとなっています。

燃料タンク容量は13リットル。ブランドロゴはステッカーでなくきちんとエンブレムにして高級感を演出。

サイドカバーのロゴも高級感のあるエンブレム。

ブレーキはABS付き。インドのシアット製タイヤもしなやかなハンドリングに貢献しています。

マフラーはブラックアウトされたキャブトンタイプ。リヤサスはメッキカバー&スプリングが眩しい2本ショック。

厚みのあるシートは乗り心地のよさに貢献。

ハンドルにはスマホの充電に便利なUSBポートを用意。

センタースタンドも装備。様々なメンテナンスや洗車時に活用することができます。
ブリット350のカラーバリエーションを見てみよう

ブラック・ゴールド

スタンダード・ブラック

スタンダード・マルーン
ブリット350の基本スペックをチェック!
ROYAL ENFIELD BULLET350 [2025]主要諸元
- 車重:195kg
- エンジン:空冷4ストロークOHC2バルブ単気筒349cc
- 最高出力:20.2PS/6100rpm
- 最大トルク:27Nm/4000rpm
- 燃料タンク容量:13L
- 変速機:5速リターン
- ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
- タイヤ:F=100/90-19、R=120/80-18
- シート高:805mm
- 価格:69万4100〜70万1800円
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