
【文:沼尾 宏明】
「夏はバイクシーズン」と言われるものの、近頃の暑さはバイクにもライダーにも過酷!様々な側面から夏を乗り切るためのポイントを厳選してレクチャーします。
目次
【車体編】熱がエンジンとタイヤに影響する!?
エンジンが不調になるオーバーヒート、特に空冷は御用心
各地で最高気温の記録が更新され、日本の夏は確実に暑くなっています。室内で運転できるクルマと違い、体をさらして走るライダーにとって、どんどん夏はキビしくなってきているのです。
バイクにとっても真夏は過酷です。エンジンはガソリンを燃焼させて動力を発生させているため、冷やさない限り熱を発生し続けます。特に夏場はエンジンが熱くなりすぎる「オーバーヒート」が発生する可能性があります。
オーバーヒートという現象は、ビギナーの方も聞いたことがあるかと思いますが、異音や回転が上昇しない、頻繁にエンストする、といった症状が発生。最悪の場合、エンジンが壊れるケースもあります。
エンジンの冷却方式は大別すると「水冷」と「空冷」の2種類があります。水冷は専用の冷却水をエンジン内部に循環させることで冷やす方式。一方の空冷は、バイクを走らせて走行風をエンジンに当てて冷却する方式です。水冷の方がエンジンを冷やしやすく、空冷はシンプルな構造で冷やしにくいと言えます。
そのため、特に空冷は夏場に高回転でエンジンを回しているとオーバーヒートする可能性が高まります。

走行風でエンジンを冷ます、昔ながらの方式が空冷。熱を放出しやすくするため、冷却フィンが刻まれています。
対策はほぼありませんが、空冷はエンジンオイルが古くなって性能が落ちていないか注意。また、オイル粘度が硬めの高性能オイルに変更するのも手です。
水冷でも冷却系が故障しているとオーバーヒートしてしまうので、しっかり整備していることが大事です。
オーバーヒートの症状が出たら、木陰など涼しい場所にバイクを置きます。その際、水を掛けるのは厳禁です。 急激にエンジンを冷やすと温度差で金属が破損する恐れがあります。空冷はエンジンを停止して冷やす、水冷の場合はエンジンを停めずにアイドリングすることが大事です。
熱で空気圧が高くなる?下げた方がいいの?正解は……
夏場に「タイヤの空気圧」をどうするか、悩む人もいるようです。
気温や路面からの熱が上昇すると、タイヤ内の空気が熱で膨張します。特に夏の路面温度は50~60℃になると言われています。
となればタイヤの空気がパンパンになってしまうので「空気圧を下げた方がいいのでは?」と考えてしまいがちです。しかし、そんなことはありません。
メーカーが設定した公道向けタイヤの指定空気圧は、季節や場所を問わずに使える設定。温度変化によるマージンを持たせているため、真夏でも指定空気圧を守ることが大事です(ただしサーキット走行時やレースタイヤは別)。

スイングアームなどに前後タイヤの空気圧が指定されています。夏でもこれを守りましょう。
気温が10℃上昇すると、タイヤの空気圧は約10kPa(0.1kgf)上昇すると言われています。気温が20℃上昇してもタイヤの空気圧変化はわずか20kPa(0.2kgf)ほど上がるだけ。それよりも走行中の摩擦や速度によって生じる熱の方が影響力は大きいのです。
とはいえ空気圧の管理は欠かさずにやるべきです。点検と調整は常温時に行いましょう。
走行直後にタイヤが暖まっている状態では、空気が膨張して空気圧が高く表示されてしまいます。その状態で指定空気圧に調整してしまうと、気温やタイヤの温度が低い状況で空気圧不足になってしまいます。

空気圧は走行前に測定。真夏の走行後は高く表示されてしまいます。
ミシュランタイヤのHPによると「空気圧は冷間時(走行後は少なくとも2時間後、走り出した場合は低速で距離3km以内)に点検してください」とあります。
近場のガソリンスタンドなどに空気入れがあればいいですが、自分用のエアゲージを買っておくのがオススメ。空気圧を見るだけなら1,000円程度~、空気を入れたり抜いたりする機能付きであれば数千円~から買えます。
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アイドリング停止で涼しく!シートの熱を和らげる小ワザも
信号待ちで停車したら、エンジンをオフにするのも手です。手動でアイドリングをストップすることで体感的にはかなり熱を緩和できます。また、燃費をアップできる効果もあります。
ただし頻繁にエンジンをオンオフしているとバッテリーに負担がかかります。点検でバッテリー容量がしっかりある場合限定の手段です。
続いて、ツーリングなどで駐車する場合。炎天下ではなるべく日陰に停めたいところです。少しバイクを離れただけでシートがキンキンに熱くなります。そのまま走るのは拷問……。
これを防ぐ方法はいくつかありますが、簡単なのは駐車時にタオルをかけておくこと。外せばすぐ走り出せます。市販されているメッシュシートカバーも有効です。

白いタオルをネットなどでシートに固定するだけ。白だと日光を反射するので、黒いシートより熱くなるのを防ぐ効果も。
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【ライダー編】涼しい時間帯と場所を選び、体に熱を貯めない
太陽にはかなわない!プランニングが何よりの対策
ライダーにも熱中症の危険性があります。高速走行のほか、ノロノロ運転で周囲に熱を発するクルマに囲まれた渋滞路では特に熱中症の危険性が高まります。無理せずに頻繁な休憩と水分&塩分補給が必要です。
正直、筆者は夏にあまり走りたくないタイプです(笑)。ただし自分なら(もし可能であれば)高温になる昼間や渋滞をなるべく避けるプランニングをします。
ツーリングに出掛ける際は、太陽が出ていない、または気温が低い時間帯になるべく行動するのです。真夏は午前7時頃から気温が急上昇していくので、遅くとも4~5時に出発。この時間帯であれば昼間より涼しく、大都市圏でも渋滞を避けられます。
そして「走る場所」も重要です。ポイントは「標高」と「北」。高度が100m上がるごとに気温は約0.6℃下がり、蒸し暑さの原因となる「湿気」も減ります。高原や山岳道路では絶景も味わえます。さらに東北や北海道など、気温が低めの北方に出かけるのです。
最も暑くなる午後から夕方までの時間帯を涼しい場所でツーリングし、気温が下がった時間帯に帰宅すれば万全です。
メッシュのウエアはやはり偉大、ズボンもメッシュで揃えたい!
様々なアイテムが発売されていますが、装備に関しては基本中の基本であるメッシュ系ウエアがやっぱり効果的。風を通して日射しを遮ってくれるので夏場の必須アイテムです。メッシュジャケットを着ている人は多いけど、パンツもメッシュで揃えている人はあまり多くないのでは?メッシュパンツは快適さが段違いなのでオススメです。
メッシュパンツには大抵、太ももやふくらはぎ内側に補強があり、熱を防ぐ構造になっていますが、購入時には一応チェック。補強がないタイプは走行風を通しはするものの、エンジンの熱で低温ヤケドする可能性があります。
低温ヤケドは約60℃までの熱に長時間触れ続けると発生します。夏場にジーンズで長時間走り続けた場合、低温ヤケドになる可能性は十分あるので、足の内側に熱が伝わりにくいズボンを選びましょう。

メッシュパンツは効果抜群。足の内側に断熱処理があるものを選びましょう。
中にはメインフレームが熱くなる車種もあります。特にアルミ製の太いフレームは熱くなりがち。アルミは熱伝導率が高く、エンジンや気温の熱がこもって熱くなってしまいます。こういう場合、筆者は、熱を通しにくい革パンツに高機能アンダーウエアを組み合わせて対処します。
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汗を吸ってすぐに乾かす高機能アンダーは快適!
メッシュと合わせて使いたいのが吸湿速乾効果に優れる高機能アンダーウエアです。汗を吸い取り、すぐ乾くため、メッシュとの相乗効果でサラッとした素肌を保てます。
一方、Tシャツや肌着で一般的なコットン(綿)は、吸汗性に優れるものの、水分を溜め込んでジトッとした感触が残ります。これではメッシュの快適さをフルに活かし切れません。

薄くて体にフィットする高機能アンダーウエアが一般的。さらに下に着るメッシュタイプ(写真)は、汗を吸い上げてアンダーに移すため、サラサラ感が持続します。
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【まとめ】暑さからは逃げられない、無理は禁物です
夏の対策はまだ色々ありますが、決定的なものはなく、暑さからは逃れにくい、と筆者は考えています。今回は自分として一番効果的と思う対策を挙げてみました。確実に一昔前より夏は暑くなっています。決して無理せずに、安全な範囲でライディングを楽しみましょう!

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