50ccがなくなる? 125ccに乗れる「新原付」ってなんだ? これからの原付免許を解説!

【文:沼尾 宏明】

従来の原付一種=50ccは今後、「新基準原付」というカテゴリーに変更されます。今までの原付免許で、排気量125cc以下の新基準原付と呼ばれるバイクへ乗車可能になります。とてもオトクな話に見えますが、実際はどうなのか?そして免許の取り方や交通ルールはどう変わるのか、解説していきましょう!

2025年から出力を抑えた125ccに乗れる新原付がスタート

2025年に免許制度や車両区分に大きな変更があります。それが「新基準原付」制度の導入です。新基準原付(以下、新原付)とは、排気量125cc以下で最高出力4kW(5.4ps)以下に制限したバイクを指します。

今までは「50cc以下」という排気量で原付一種クラスを区分してきましたが、今後は枠組みが変わり、出力を制限した125cc以下の新原付バイクを原付免許で運転できるようになります

車両は新開発ではなく、現行の原付二種(51~125cc)から出力を落としたモデルになる模様。車体は同じで、最高出力のみダウンされることになります。なお、既に登場が予告されている車両もあります(詳細は後述)。

導入の理由は50ccが絶滅の危機にあるから

ところで、なぜ長年続いてきた原付一種=50ccの制度が変更されるのでしょうか? それは、50ccバイクが絶滅の危機にあるからです。

2025年11月から厳しい排ガス規制が適用されますが、排気量の小さい50ccでは規制値をクリアすることが困難。技術的にクリアできたとしても、非常にコストがかかり、車両価格が高額になってしまいます。

近年50ccはほぼ日本専売となっています。しかも国内の需要は減少を続けており、ピークだった1982年の出荷台数が278万台だったのに対し、2023年は9万2000台にまで落ち込んでいます。コストをかけて排ガス規制をクリアしたとしても、セールスが不振で採算が取れないことから、メーカーは生産から撤退すると予想されているのです。

とはいえ、日本で50ccは、公共交通機関の少ない地方を中心に庶民の足として今も活躍中。最短1日で取得できる容易さも魅力です。また、セールスが不振と言っても、現在も年間9万台程度が販売されています。50ccがなくなったら国民もメーカーも困る……。そこで苦肉の策として提案されたのがコストを抑えて販売できる新原付なのです。

排ガスを浄化する触媒は、300度超で浄化が始まりますが、50ccは温度上昇に約240秒かかり、炭化水素(HC)規制値の100mgをクリアできません。こうした事情が新原付の検討開始の背景にあるのです。

2025年4月からスタート予定、免許制度や交通ルールは原付と同じ

免許制度の改正時期は2025年4月の予定です。

運転できる免許は、原付一種(50cc以下)を運転できる従来の原付免許と同じです。改正後に新原付免許を取得した人はもちろん、既に原付免許を持っている人も運転できます。新原付免許を取得すれば、今までの50ccも乗車できます。

交通ルールも現行の原付一種と同様。上限30km/h、二段階右折が維持され、二人乗りはNGです。
原付二種(51~125cc以下)の乗車に必要な「小型限定普通二輪免許」は今後も継続されます。

従来の原付と新原付、原付に種を比較した表。
50ccという排気量ではなく、最高出力で区分されることになります。

スーパーカブは不滅? 50がなくなっても110が新原付として登場へ!

新原付の車両はまだ登場していません(2024年9月現在)。既にメーカーは新原付を開発中との噂で、2025年4月の新原付制度スタートに合わせ、発売される可能性はあるでしょう。

では、一体どんなバイクが新原付として登場するのでしょうか?

関係者によると100~110cc程度の既存モデルが新原付化される、としています。125ccクラスを新原付化した場合、価格が高くなるのと同時に車重もヘビー。パワーを抑えると動力性能が悪化するからでしょう。したがってモンキー125CT125ハンターカブPCX125などの125ccは新原付化しないかもしれません。

現在、登場が確実視されているのがスーパーカブ110の新原付版です。1958年に初代がデビューしたベストセラーのスーパーカブ50も生産終了の見込みですが、ホンダ首脳が「スーパーカブはなくなりません」と明言。現行スーパーカブ110(30万2500円)をベースにパワーダウンした新原付版が登場すると予想されています。

日本製バイクを象徴するスーパーカブ50が生産終了しても、110(写真)ベースの新原付が登場する見込みです。50と110の基本構成は一緒なので、違和感はないハズです。

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新原付の価格はどうなる? 安くなる可能性も?

価格がどうなるかも気になるところです。

国内4メーカーの51~125ccクラスでは、ディオ110(ホンダ)の21万7800円が最安値。アドレス125(スズキ)の27万3900円、ジョグ125(ヤマハ)の26万7300円もリーズナブルです。

新原付の車体やエンジンは51~125ccモデルがベースとなるので、価格はベース車とあまり変わらないと予想されます。前述のスーパーカブ110新原付版も大幅に値下げされることはないでしょう。

なお50ccクラスでは現在、レッツ(スズキ)の17万1600円が最安。ほかにタクト(ホンダ)の17万9300円、ジョグの18万1500円(ヤマハ)などがラインナップされています。新原付も20万円前後にまで近づけばうれしいですが、これはメーカーの頑張りに期待するしかないでしょう。

また、海外で生産されている110cc前後の格安スクーターを新原付化して国内販売する案もあるようです。これなら、かなり買いやすい価格になるかもしれません。

国内の51~125ccクラスで最も安価なのがディオ110(ホンダ)。グローバルに販売されるスクーターです。

意外? 新原付の運転のしやすさは原付とほぼ変わらない?

素朴な疑問ですが、出力を抑えたと言っても、原付免許で125ccクラスの運転はできるものなのでしょうか?

これに関しては既にプロと一般ライダーによるテストが行われており「ほぼ問題ない」とされています。

2023年9月から警察庁が検討を開始し、50ccと110~125ccの原付二種、新原付の比較を実施。その結果、125cc以下のバイクでも出力を抑えれば、安全性と運転のしやすさを確保でき、一部のモデルでは「50ccより運転しやすい」と結論づけたのです。

運転免許試験場の技能コースにおいて、免許の実技試験(いわゆる一発試験)を担当する技能試験官12名と、原付免許を保有する一般ライダーの試乗会を実施。「新原付」の試作車として用意されたのは、PCXCB125R、スーパーカブ110、リード125、ビジョン110(国内版ディオ110)の5車種が用意されました(いずれもメーカーはホンダ)。

発進時、停車時、交差点、坂道、踏切通過時、スラローム、引き起こし、押し歩きなどの運転特性を原付らと比べて評価。「1易しい、2やや易しい、3同程度、4やや難しい、5難しい」の5段階で判断した。

技能試験官、一般ライダーとも、現行50ccと比べて新原付を「同等~やや易しい」と評価。評価数503のうち、新原付と原付は「変わらない」が最多の36%。「少し容易」32%、「容易」29%の順で多く、原付より運転しやすいと感じた人が60%超でした。つまり運転特性は、現行の原付とほぼ同じと考えられるようなのです。

新原付のPCXは、現行PCX(125cc)やベンリィ(50cc)と比較。
同じく新原付リード125は現行モデルとギア(50cc)、新原付ビジョン110はタクト(50cc)、新原付スーパーカブ110は同50と現行110、新原付CB125Rは現行モデルおよびベンリィと比較しました。


技能試験官によると、現行の50ccと新原付では運転のしやすさは、同程度か、やや易しいという結果に。

ただし、わずかに「やや難しい」と評価されたのは、主に「坂道」「引き起こし」「加速力」の3項目です。特に急坂での発進はやや難しい模様。新原付のPCXはアクセル全開で発進する必要があるなど、力不足を感じた人が多かったようです。また、引き起こしに関しては、新原付スーパーカブ110を除いて「少し重量感を感じる」という意見があったものの、決して無理というわけではない模様です。

加速力はさすがに鈍るものの、車体が一回り大きくなっても出力が低いのでアクセルが操作しやすく、特に発進や低速時は新原付の方が行いやすいとの評価。また多少の重さがあるものの、停止も問題ないレベルのようです。

一方、ネガな意見として「初心者が乗る際には練習が重要」「パワー不足のため、急な坂であれば坂道発進は難しい可能性がある」といった意見のほか、「車両に対しての慣れや、スピードに対して注意が必要」との声も。

また、車体の大きさによっては、女性や高齢者、低身長の方に足着き性が懸念されるという意見も。ただし「最終的には慣れの部分が大きいので、シートの大きさや、足つきなどメーカーの開発に期待したい」と、改良や新開発を期待する声もありました。

[まとめ」ガソリンエンジンバイクの代替手段はやっぱり必要

50ccバイクのほかにも、最近は電動バイク、電動アシスト自転車、電動キックボードなどの特定原付といった移動手段が出てきました。しかしながら、航続距離や登坂性能を考えた場合、やはりガソリンエンジンの50ccに優位性があります。

50ccが生産終了したとしても、新原付が登場することで今後も大事な移動手段の一つが確保されることになるのは一安心です。どんなバイクが登場するのか待ちたいところです。


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