【文:沼尾 宏明】
走行シーンを録画でき、万一の際には事故の証拠にもなるドライブレコーダー。
徐々に普及が進んできて、標準採用するバイクも出てきました。かなりの費用がかかりますが、これから乗るビギナーにドラレコは必要なのか?GoPro(ゴープロ)などのカメラで代用ではできるのか?解説していきましょう!
目次
ドラレコは周囲の状況を記録し、「万一」の保険になる!
クルマではかなりメジャーなドライブレコーダー(ドラレコ)。バイクの場合、機器の大きさや搭載箇所などの問題で以前は普及していませんでしたが、コンパクトなバイク対応ドラレコが発売され、装着している人が増えてきました。
そんな中、ドラレコを日本車で初めて標準採用したカワサキのエリミネーターSEが2023年に登場しています。
KAWASAKI エリミネーター400(2023-)
まずドラレコにはどんな機能があるのか解説しましょう。
どんなに注意していようと、公道を走っていれば不意の事故に遭遇する可能性はあります。また近年、危険なあおり運転が社会問題になりました。そもそも事故が起きた際、双方の言い分が食い違うことはよくあります。
ましてや運転者の体が覆われないバイクは、交通社会において圧倒的に弱者。事故が起きた際、目撃者がいなければ、被害者となったライダーは証言できない可能性があります。
そこで注目されているのがドライブレコーダー。カメラで周囲を記録するため、実際にどういう状況で事故が発生したのか、客観的かつ有力な証拠となります。
前後にカメラを設置し、前方からの事故や後ろからの追突などを記録できるタイプが一般的(前だけ、後ろだけの製品もあります)。GPSで時刻や位置などのデータを取得し、事故が発生した場所の特定にも役立ちます。
また、事故や急停止などで車両への衝撃が加わった際は「Gセンサー」(加速度センサー、加速度計)で感知するタイプが基本。この機能は非常に大事です。
一般的にドラレコは内蔵メモリーの容量がいっぱいになると、古い映像を消しながら新しい映像を録画する「ループ記録」をします。しかし、車両への衝撃を感知すると、その瞬間の前後の映像をSDカードなどのメモリーカードへ自動的に移動させ、映像が消えないように保存してくれるのがGセンサーの機能です。これがないと、ループ録画によって事故の映像が上書されてしまう可能性が!こうなっては元も子もありません。
ウェビック
取り付け工賃込みで4万~5万円以上、それでも必要?
こうした機能を考えれば、ビギナー、ベテランを問わず、ドラレコはあった方が望ましい装備であることは間違いないでしょう。
ドラレコの本体価格は様々で、安価な製品なら1万円未満から存在します。ただし後述の性能を満たし、安心できる大手メーカーの製品となると3万円前後~が相場。さらに取り付け工賃は最も安くて1万2000円程度~、2万円以上が相場です。工賃は車種によっても異なり、最も安いのはネイキッド。スーパースポーツやスクーターなどカウルがある車種は着脱が必要なので、その分料金が高くなります。
となるとドラレコを装着するのに安くても合計4万~5万円以上はかかります。自分で装着すればコストを抑えられますが、配線の取り回しなどが複雑なので電装系の知識がない人はショップに任せた方が無難です。
それなりの出費となりますが、自分の身を守れる保険だと思えば、個人的には決して高すぎるとは思いません。
ちなみに走行風景が記録されるので、後からツーリングや旅の思い出を楽しむこともできます。ドラレコは、決して事故のためというネガティブな役割だけでなく、エンターテイメントの役割も同時に持っているのです。
ドラレコ選びの基準はGセンサーと画質、露出補正機能
ドラレコを選ぶ際には、前述のGセンサー機能があるもののほか、画質も重視しましょう。事故が起きた際、録画した映像から相手のナンバープレートが認識できる程度の画質は必要です。解像度はフルHD(1080P)以上ないとキビシイでしょう。
また露出補正機能も必須。急にトンネルに入った場合や夜間は周囲が暗くなるため、昼間よりノイズが出て黒く潰れて見えなかったり、明暗差による「白飛び」が発生しがちです(白飛びとは、急に明るいところに出たり、周囲の車両のヘッドライトで明るくなりすぎ、映像が白くなってしまうこと)。
これを補うのが露出補正機能。周囲の暗さに応じて画像を自動補正し、HDR(ハイダイナミックレンジ)やWDR(ワイドダイナミックレンジ)などと呼ばれています。これらの機能がある製品を選ぶといいでしょう。
GoProなどのアクションカメラで代用できる?
持ち運びやすいサイズながら高画質な動画を撮影できるアクションカメラもライダーに人気があります。「GoPro」が代表的で、走行動画をアップしているライダーもよく見かけますよね。このアクションカメラをドラレコとして使えそうなイメージがあります。結論としては、使えないことはないですが、ハードルはやや高いです。
アクションカメラは基本的に内臓バッテリーなので撮影可能時間が限られ、バイクのUSBソケットなどから給電する必要があります。また、長時間使用による発熱の問題もあり、1時間程度の連続撮影で強制終了してしまうケースも。
加えて、ドラレコはメインキーONで自動録画されますが、アクションカメラでは手動で逐一録画ボタンをONする必要があります。ただし、これは慣れれば何とかなるでしょう。
しかし一番の問題は、Gセンサーのように衝撃が加わった際の映像を保存しておく機能がないことです。前述のとおりドラレコの場合、事故や急ブレーキなどの衝撃を感知して自動で映像を保存し、映像を上書きできないようにしてくれます。
アクションカメラにこの機能はついていません。事故の動画を保存したい場合には、録画を中断して事故後に家でデータを取り出す必要があります。ループ録画にしていて、例えば意識を失って電源をオフにできないと事故の瞬間を上書きしてしまう可能性があります。これではドラレコの意味がありません。
また、大部分のアクションカメラは前後を撮影するために二つ購入する必要があります。多くは視野角が100°以上と広いのですが、前後二つのカメラが必要になります。アクションカメラは単品で3万~7万円程度なので、前後揃えるとなるとドラレコより高くついてしまいます。ただし360度撮影できるタイプも5万円~で販売されています。
また本体とカメラが一体化しているため、バイクから離れる際は盗難防止のために取り外す必要があります。こうした手間はドラレコなら不要です。
このようにデメリットはあるものの、ドラレコより画質がいい製品が多いのはアクションカメラならではの魅力。事故の状況やツーリングの記録でも鮮明な動画を残してくれるでしょう。
【まとめ】ドラレコは全ライダーにオススメ、アクションカメラより事故の記録向き
いかがだったでしょうか。万一の際、ドラレコは強い味方になってくれます。また旅の思い出の記録として楽しむこともでき、一石二鳥の役割があります。
既にGoProなどのアクションカメラを持っている人はドラレコ代わりに使えないこともないですが、やはりドラレコの方が事故の記録をするという目的に特化しています。事故に遭った際の保険として導入してみてはいかがでしょう。
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