その整備、違法かも!?「認証工場」で確実なメンテナンスを [ユーザー編]

【文:沼尾宏明】

「認証工場」は、バイクの整備&点検や修理、カスタムを安心して任せられるショップの証だ。実は、バイクの分解整備を行うには認証工場の資格が必要。資格ナシで分解整備をすると違法になってしまい、トラブルに発展するケースもある。

認証工場を利用することはユーザーにとって大きな利点があり、ショップにとっても認証工場の資格を得ることで消費者に多くのベネフィットを提供できる。

意外と知られていない「認証工場」の重要性をここで解説しよう!

アナタは違法工場で整備していないか?

「認証工場」とは何か? この言葉を聞いたことがあっても詳細を知らないライダーは多いのではないだろうか。実はバイクライフを送る上で、認証工場を知っているのと知っていないのとでは大きな違いがある。その理由を解説していきたい。

バイクショップでは、ブレーキキャリパーやホイール、エンジンを取り外しての整備&点検、カスタムは当たり前のように行われている。しかし、こうしたパーツの脱着を伴う行為は「分解整備」と呼ばれ、認証工場の資格を得てないないショップが行うと“違法”になってしまうのだ。
各メーカーの正規ディーラーは基本的に認証工場と考えていい。しかし一般的なバイクショップの中には認証を得ていない“違法工場”のケースもある。

認証工場の資格を得るには、スタッフの資格や人数、工場の広さ、設備機器、資金の基盤など細かな基準をクリアし、地方運輸局長から認可される必要がある。確かな技術を備えた整備士が点検&整備を行うので、安心してバイクを任せられるというわけだ。

ユーザーが認証工場かどうかを見極めるのはカンタン。お店の見えやすい場所に、下記の黄色いプレートが掲示されている。

「認証工場」プレート

運輸局から認可を受けた証である「認証工場」の黄色プレート。これがないショップは未認証工場となる。


認証工場じゃないショップが分解整備を行うのはNG!

では、どういった整備が認証工場しかできない「分解整備」にあたるのか。実はパーツの着脱を伴う整備のほとんどが分解整備に該当している。整備の大部分が認証工場でなければできないと言って過言ではない。

なお、一般ユーザーが分解整備を行うのは合法だ。自分でメンテナンスしたり、パーツを購入して自分でDIYしても全く大丈夫。ただし、誰かのバイクを整備してお金を受け取ったりする営利目的だと違法になるのでご注意を。

整備内容と整備士資格、認証の有無による関係をまとめた表

整備内容と整備士資格、認証の有無による関係をまとめた表(○は合法、×は違法)。趣味として金銭を受け取らない場合、誰が分解整備しても合法だ。


1.ブレーキ関連
分解整備と言えば、まず代表的なのがブレーキ(制動装置)。 キャリパーの脱着をはじめ、ブレーキホースやディスクの脱着、マスターシリンダーの分解、ブレーキシューの交換(ドラムブレーキの場合)などが分解整備に該当する。ちなみにキャリパーを脱着しないパッド交換は分解整備に当たらないが、ブレーキに関するほとんどの整備が分解整備なのだ。

ブレーキメンテナンス-2

キャリパーを外すだけで分解整備。もちろんキャリパーのオーバーホールやブレーキパッドの交換も分解整備だ。


ブレーキメンテナンス-3

制動装置(ブレーキ)は命を預かるパーツだけに分解整備でも特に多くの項目が設けられている。マスターシリンダーのオーバーホールも分解整備だ。



2.ホイール着脱やタイヤ交換も分解整備
「走行装置」に当たるホイールの着脱やタイヤ交換、アクスルシャフトの交換も分解整備だ。

走行装置メンテナンス

3.前後サスやステムの着脱も該当
「緩衝装置」にあたる前後サスペンションの着脱や交換も認証工場でないと認められない。フロントフォークやリヤサスの着脱、前後スプリングの交換も同様だ。また「かじ取り装置」であるステアリングステムの着脱なども同様だ。

緩衝装置メンテナンス

4.エンジンの取り外しはもちろん、意外にもハンドルは分解整備
「動力伝達装置」(クラッチやミッション)のほか、クランクケースを外したり、原動機(エンジン)を下ろして行うような重整備も当然、分解整備に該当する。また、意外なところではハンドル、ステップの着脱も分解整備になる。

動力伝達装置メンテナンス

5.ETC車載器の取り付けも分解整備
バイクでも普及しつつあるETC車載器。装着するには、各部を着脱して複雑な配線が必要になるため、こちらも認証工場の資格が必要だ。

ETC車載器の着脱-1
ETC車載器の着脱-2

認証工場では、ETC車載器をセットアップしたらテスターを使用し、アンテナからきちんと電波が送信されているか点検。料金所のゲートが開かずパニックになることもない。


認証工場は充実の設備で安心、分解整備記録簿も発行される

認証工場では検査機器が充実しており、高度な整備と点検を受けられるのもユーザーのメリット。電装系のチェックに不可欠なサーキットテスターのほか、エンジンの整備に必要なタコテスターやコンプレッションゲージ、排ガスを検査できるテスターなどの設置が義務付けられている。

多彩な点検や部品交換、修理が必要となる「車検」も当然、認証工場は得意だ。

認証工具-1

認証工場では、一般ユーザーになじみの薄い認証工具が揃う。認証工場で使用するタイヤの空気圧ゲージなどのツールは、確実な測定をするため、数値が正常か定期的な点検を受けている。

認証工具-2

認証工場は、排ガス用のCO(一酸化炭素)とHC(炭化水素)の測定器を完備。カスタム車や古い車両などは車検の排ガス検査で落ちるケースもあるが、認証工場なら事前にショップでテストし、点検してくれるので安心。

まるで病院のカルテ、認証工場ならではの「分解整備記録簿」

分解整備記録簿の存在も大きい。認証工場で分解整備をすると、各地の整備振興会が発行する「分解整備記録簿」に記入し、2年間の保存義務が発生する(2021年4月から「特定整備記録簿」に名称変更)。記録簿には整備内容や日時、整備士の名前などが記され、まるでカルテのようにバイクの整備履歴と不具合の有無が把握できる。

その後、点検&整備作業が原因で不具合が発生した場合、無償で整備を実施してくれる。なお未認証工場では分解整備ができないため、本来はチェック項目に、「交換」(×印)、「修理」(△印)の記号を書き込むこと自体が不可だ。

また、この記録簿があれば、中古車を購入する際、整備の内容や履歴を確認できるため、安心して購入できる目安にもなる。

さらに言えば、認証工場ならバイクの購入も安心だ。ネットオークションなどの個人売買で安くバイクを手に入れるのが流行っているが、結局、整備や修理代がかさみ、高くつくケースも多い。また、お店で見てもらうにせよ、一般的にバイクショップは他店で購入したバイクを整備する際、自店で購入した場合よりレバレート(整備代)を高く設定している。

 一方、認証工場で整備済みの中古車を購入した場合、そもそも不具合が発生する確率が少ない上に、万一トラブルが発生したとしてもフォローが万全。長くバイクと付き合うなら整備が信頼できるショップと付き合った方が、結局トータルではコストを抑えられることが多いのだ。

分解整備記録簿

認証工場では、分解整備記録簿を使用し、分解整備を伴う交換や修理が可能。一方、未認証工場や車検代行サービスでは、点検しか許可されていない。

取材協力店

 

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