【文:沼尾 宏明】
転倒したり、事故を起こしたりした時、どうすればいいのか…!? 頭は真っ白だし、バイクからは何か液体が漏れてる!? などなど、パニックになりがちです。特に初動は重要で、命にかかわる場合もあります。前編では転んだ直後にすべき行動をはじめ、警察や保険会社への連絡のタイミング、相手がいる場合の対処法などを解説します。
目次
事故や転倒はベテランでもパニックになりがち!
注意していても交通事故は起きてしまうもの。そして、二輪で走るバイクにはどうしても転倒がつきまといます。
私も免許取り立ての時、初めてのツーリングで転倒して慌てた経験があります。ベテランでさえ気が動転してしまうのに、ビギナーはなおさら事故や転倒時にどう行動すればいいのかわからないですよね。
前編ではどのように行動したらいいのか解説。「単独での事故」と「相手がいる事故」の場合に分けてレクチャーしていきましょう。
一人で走っていて事故&転倒が起きてしまったら!?
単独事故① バイクより身の安全を最優先
まずは相手がおらず、自分が単独で転倒や事故を起こしたケースです。
転倒した場所が車道の場合、最優先すべきはライダー自身の安全です。なるべく速やかに路肩など安全な場所まで移動しましょう。
バイクが車道に残されている場合、すぐに車両を引き起こしたくなりますが、特に見通しが悪い箇所では後続車に気づかれにくいです。引き起こししている間、後続車に突っ込まれて生命を失うことだけは避けるべきです。
単独事故② 身体の状況は? ケガを確認
安全な所まで移動できたら、身体の状態をチェックします。どこかに痛みはないか、吐き気はないか点検。事故の直後は、興奮やパニックでケガの痛みに気がつかない場合があります。
大きなケガをしているなら、速やかに救急車を呼びましょう。
単独事故③ 身体が動けるなら、後続車に合図
身体に大きな問題がなければ、後続車が停止してくれている状況であれば、転倒したバイクを確認します。見通しの悪い場合、バイクを引き起こす前に、後続車へ合図を送って停止してもらいましょう。
後続車のドライバーにお願いして、後から続く車両に注意を促してもらうことも重要です。遠慮してしまいがちですが、結果的に短時間で転倒したバイクを移動できるので、ここは周囲に協力をお願いしましょう。例えばクルマのハザードをつけてもらったり、三角停止表示板(停止板)を置いてもらう、発炎筒を焚いてもらうなどして、後続車に危険を喚起することが望ましいです。
もちろん一緒にツーリングしている仲間がいれば協力してもらい、後続車両に合図して停止してもらったり、引き起こしを手伝ってもらいましょう。
単独事故④ エンジンを切って車両を引き起こす
倒れているバイクに近づいたら、まずエンジンがオフになっているか確認します。エンジンが動いていると、アクセルが回って車両が不意に動き出してしまうことがあるからです。キルスイッチか、キーをひねってエンジンを切りましょう。
なお、最近の車両はセンサーがあるため、必要以上の角度に車両が倒れると自動的にエンジンがオフになる場合もあります。
引き起こしのやり方は、ここでは詳しく解説しませんが、ギヤを1速に入れる、またはブレーキをかけてタイヤが動かない状態で行いましょう。バイクを起こしたら、安全な場所まで押し歩きします。
単独事故⑤ 事故の場合は警察に連絡しましょう
単独での転倒で、ライダー本人が元気な状況でも、事故の場合は警察を呼ぶ義務があります。呼ばないと、事故報告義務違反となり、罰則を受ける可能性があります。
単独での「自損事故」の保険に入っている人は「事故証明書」が必要になるケースも。警察を呼ばないと証明書が発行できず、保険が下りない場合もあります。
警察への連絡で場所の説明が難しい場合、スマホがあるなら道の名称(国道○○線)や建物の名前などを検索して説明。何かランドマークが見えれば、それを伝えるのもいいでしょう。特に目印がない場合は何らかの施設から「○○方面に何分程度」などと説明するのがオススメです。
単独事故⑥ バイクの状態を点検、破損が激しいならレッカーを
その後、バイクの状態を点検(詳細は後編)。動けるようなら走り出しましょう。各部の故障や破損で移動が難しい場合は、ムリせずレッカーを呼び、修理してもらえるショップか自宅まで運んでもらいます。
レッカーはJAFがメジャーです。ただし事前に会員になっていれば20kmまで無料ですが、入会していないと2万7,700円~(別途1kmごとにけん引料830円)がかかります。個人会員は入会金2,000円、年会費4,000円(クレジットカードは入会金が500円引き)。
近頃は任意保険にレッカーサービスが含まれている場合も増えています。任意保険の契約内容がわからない人は今すぐ確認するか、レッカー付きの保険に加入しておくといいでしょう。
この段階で保険会社に連絡すると、レッカー車や代車の手配などを保険会社がしてくれることがあります。保険会社にいつ連絡するかについては、特に決まりがあるわけではありませんが、今後の対応に関してアドバイスももらえるので、早めに連絡した方がいいでしょう。
他のライダーの事故に遭遇したら、同様に救援しましょう
他のライダーが転倒していたり、事故を起こしていた場合は、同様に手助けしましょう。事故や転倒を見て、すぐその場でバイクを停めてしまいがちですが、周囲をしっかりと確認して安全な場所に停めてから救助に向かうこと。二次災害的に別の事故を引き起こしてしまう可能性があるので注意しましょう。
そして、負傷者の状態を確認し、必要なら「119」番に電話します。この場合も事故の内容、発生場所、負傷者の状態などの情報をしっかり伝えましょう。
クルマやバイク、歩行者など相手がいる事故を起こしたら!?
相手がいる事故① 安全を確保したら、相手の情報を確認
続いて、単独ではなく、相手がいる事故の場合について解説します。
まず初めにやることは単独事故と同様です。自分または相手を安全な場所に移動し、二次被害が起きないよう後続車に注意を喚起。バイクや車両を安全な場所に動かしてから警察に連絡します。
さらに追加すべきなのが、「相手方の情報」と「現場の状況」を確認することです。
「相手方の情報」とは、相手の名前や車種、ナンバー、連絡先(住所、電話番号、メールアドレスなど)、保険会社名と保険証券番号を控えておくということです。こちらの情報も共有します。
交通事故の場合、加害者側は基本的に保険担当者が代理人になるため、実際に当事者同士で連絡を取るケースはほぼないでしょう。保険会社名や保険証券番号を確認するのは、治療費の支払いや示談交渉において、被害者側が加害者側の保険会社とやりとりする可能性があるためです。
相手がいる事故② 現場の状況をメモ、目撃者やドラレコも重要
「現場の状況」も確認します。これは、事故が起きた現場の住所や道路形態(交差点の種類、標識、信号の色など)のこと。後になると記憶があやふやになるので、メモするのがオススメです。
その理由は、後に事故の示談などで相手ともめた場合、事故発生時の情報が多ければ多いほどいいからです。示談交渉が始まると、事故内容について嘘をついたり、虚偽の主張をする人もいるのです。
さらに、もし目撃者がいた場合は、氏名と連絡先を教えてもらうといいでしょう。これも後に示談でもめた際、証人になってもらうためです。
周囲を記録するドライブレコーダーを搭載している場合、事故が発生した前後の記録が上書きされないようにご注意を。ドラレコの記録は客観的かつ有力な証拠になる場合が多いですが、ループ録画で記録が上書きされて、決定的な事故の瞬間が消去されてしまうこともあります。
衝撃を感知すると上書きされない機能がついているドラレコもありますが、データをロックするなどしっかり対処しましょう。
現場や相手との情報を確認し、警察の立ち会いが終わったら、保険会社に連絡しておきましょう。
※後編では、転倒したバイクで走り出すための緊急対処法やチェックの仕方をレクチャーします!
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