【文:沼尾 宏明】
ホンダのスーパーカブシリーズは、世界的に人気があり、庶民の足として大活躍しています。
なぜ人気があるのか?
そして“万人に乗りやすい”とよく言われるけど、初めてのバイクとしても大丈夫なの?
2021年型スーパーカブ110を所有する筆者が、そんな疑問を解説します。
目次
累計生産1億台を突破した唯一のバイク!
バイクを知らない人でも、スーパーカブを知らない人はまずいないハズ。一般家庭に普及しているのはもちろん、郵便配達や新聞配達で使用され、商店と金融機関の軒先にも置いてある。まさに日本の生活と文化に溶け込んでいるバイクです。
そんなカブが登場したのは1958年。以来、世界中で愛され、熟成を重ね、現在に至っています。その人気はすさまじく、2017年10月に世界生産累計台数1億台を達成し、現在もその台数を伸ばし続けています。この台数は、単一シリーズのバイクとしては世界最高記録です。
スーパーカブC100
スーパーカブの初代が1958年に登場したスーパーカブC100。「100」と言っても100ccではなく、49ccのOHV空冷単気筒を搭載しています。車重も55kgと軽量でした。
初代スーパーカブの開発総責任者は、ホンダの創業者である本田宗一郎氏。国内での大ヒットに続き、アメリカでも人気を獲得し、ホンダの名を世界に知らしめた1台です。
1960年代から50ccと大排気量版の2本立てをラインナップしており、兄貴分は2008年まで90、それ以降は110がデビュー。2018年秋からスーパーカブC125も登場しました。
現行型のスーパーカブ50と110は2022年に登場し、排ガス規制に対応したエンジンを搭載。50はスポークホイールを継続採用しますが、110はキャストホイールとフロントディスクブレーキを獲得しています。
スーパーカブ50
スーパーカブ50は伝統的なワイヤースポークホイールと前後ドラムブレーキを継続採用しています。24万7,500円。(2023年5月現在)
スーパーカブ110
現行のスーパーカブ110はキャストホイールとフロントディスクブレーキを採用。30万2,500円。(2023年5月現在)
スーパーカブC125
スーパーカブC125は、シリーズ最大排気量で装備もゴージャスなプレミアムモデル。初代C100をモチーフにしたデザインが特徴です。44万円。(2023年5月現在)
派生モデル
他にも派生モデルとして、前カゴや大型リヤキャリアを備えるスーパーカブ50/110プロ、スーパーカブをベースにアウトドア向けの装備を与えたクロスカブ50/110、スーパーカブC125系のエンジンでオフロード指向の専用設計を持つCT125ハンターカブがあります。
※現行のラインナップからピックアップしています。
偉大なるデザインは「立体商標」にも登録済み!
初代から現代まで続く特徴として特筆すべきは、やはりデザイン。丸みを帯び、流線型を描くフォルムは、一目で「スーパーカブ」とわかります。
この独特なデザインは、フレームが股下を通るアンダーボーンフレームに負う所も大きいでしょう。これはエンジンの横向き(水平)に配置することで、足を跨ぎやすくした結果、生まれた構造。ビジネスシーンで利便性が高く、スカートを履いた女性でもまたがりやすいメリットがあります。
さらにスーパーカブは、2014年6月に特許庁の立体商標に登録されています。「立体商標」とは、わかりやすく言えば“カタチの特許”。1958年の誕生から50年以上の間、機能向上を図りつつ一貫したデザインコンセプトを守り続けた結果、デザインを見ただけでカブと認識できることから認められた経緯があります。
乗り物が立体商標として認められることはレアで、他の例としてはコカコーラの瓶やフォルクスワーゲンのビートルなどが登録されています。
デザインと機能性を兼ね備えたデザイン。初代の開発時は直線的でシャープなデザインが流行していましたが、本田宗一郎氏は「優しいラインじゃなきゃダメだ」と丸みを帯びたフォルムにこだわりました。その姿は現在のスーパーカブにも活きています。
レバーがなくてもギヤチェンジ可能、乗っていてラクチン
そして走り味は、とてもイージーでいて、味わいと楽しさに満ちています。
最もベーシックなスーパーカブ110と50について書きますが、まず独特なのが“自動遠心クラッチ”です。クラッチレバーを備えず、足元のペダルのみでギヤチェンジでき、現行モデルは50、110ともに4速ミッションを採用。クラッチレバーの操作が要らないので、オートマ限定免許で運転できます。これは出前などで片手がふさがっていてもギヤチェンジできるよう採用されたと言われています。
一般的なバイクのシフトパターンと違い、“ロータリー式に近いリターン式”なのも特徴。シフトペダルの前側を踏み込むとシフトアップ。後ろ側を踏むとシフトダウンして、停止中だけ4速からニュートラルに入る仕組みです。なお、走行中にシフトアップしても4速のままなのでご安心を。
クラッチ操作が要らないのに、ギヤチェンジできるため、ラクさとスポーティさを両立している機構なのです。
前側を踏むとシフトアップ、後ろ側を踏むとシフトダウンする。シーソーみたいに動くので、“シーソーペダル”とも。レバー要らずなのにスポーティな走りも楽しめます。※写真は2021年式スーパーカブ110 筆者撮影
ちなみに一般的なクラッチ付き+リターン式のバイクとはペダルの動きが逆なので、乗り換えた際、シフトアップしたい場面でシフトダウンして、盛大にエンジンを吹かしてしまうこともあります(笑)。
扱いやすさも味わいも十分、初心者からベテランまで楽しめる!
走り出すと「ドゥリューン」という独特なサウンドとともに加速し、振動も相当回転数を上げない限りほぼありません。特に現行型はエンジンフィールが上質で驚くかもしれません。さらにソフトなサスが相まって、乗り心地もやわらかい。飛ばすよりノンビリ走るのが気持ちいいので、「ゆっくり行こうか」という気分になります。
しかも車体が非常に軽い(110は車重101kg 50は96kg)。取り回しやUターンなどの小回りに緊張感がなく、意のままに操れるし、ちょっとしたダートでも何とかなってしまうハズです。
とはいえ、決して遅くはなく、110ならテンポよくシフトアップしていけば60km/hに割とすぐ到達。一方、2速で発進できるほど極低速では粘ります。とてもフレキシブルなエンジン特性なのです。
スリム&軽快な車体で気負わず乗れます。足着き性も良好で、身長159cm&体重50kgのライダーの場合、両足の指の付け根がしっかり着きます。
もちろんハンドリングは軽やか。体をイン側に動かしただけで向きを変え、さらにステップワークや逆操舵を使うとスパッと車体が寝てくれます。まるで自転車に乗っている感覚。倒し込みから旋回中もクセがなく、安心です。
初心者にももちろん乗りやすく、ベテランにとっても楽しい。最初のバイクにカブを選び、様々な車種を乗り継いだ後、最後のバイクにカブを選ぶ人もいます。バイクは「カブに始まり、カブに終わる」と言われるほど。乗りやすいだけではなく、奥が深いのです。
世界中のライダーから愛される理由が少しはわかっていただけたでしょうか。かく言う私も愛車と過ごすのが楽しくて仕方ありません!
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